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障害者福祉を専門とする大学教員。福岡県障がい者施策審議会会長、福岡県強度行動障がい者支援協議会会長、福岡県自立支援協議会委員等を務めている。支援者に虐待の意図がないまま生じる無自覚の障害者虐待を主要な研究テーマとし、日常的な支援や業務慣行がどのように無自覚の虐待につながるのかを分析している。あわせて、保健福祉分野における業務効率化を目的としたICT活用モデルの構築について、実践的な検討を行っている。
相談支援事業所を運営・管理する方の中には、「BCPはなぜ必要なの?」「BCPの運用のポイントは?」と疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、相談支援事業所のBCP(業務継続計画)の基本やBCPの策定・運用のポイント、BCPに記載するべき項目、BCPの研修・訓練の内容などを解説します。
ぜひ、最後までお読みください。
相談支援事業におけるBCP(業務継続計画)とは?
BCP(業務継続計画)とは?
BCPとはBusiness Continuity Planの略で、「業務継続計画」とも呼ばれています。
自然災害や感染症のまん延といった緊急時にサービスを継続するためにどのように行動するか、具体的な指針等を定めた計画のことです。
相談支援事業は、利用者やその家族の生活全体を支える役割を担っています。そのため、非常時に支援が途切れることは、利用者の生活に深刻な影響を及ぼす可能性があります。BCPの策定は単なる書面整備ではなく、相談支援事業の社会的責務を果たす基礎的要件であるといえます。
相談支援事業におけるBCP(業務継続計画)策定の義務
BCPの策定は2021年度の報酬改定で努力義務とされ、2024年4月から策定が義務化されました。
相談支援事業の運営基準には次の項目が定められています。
(業務継続計画の策定等)
第二十条の二 指定特定相談支援事業者は、感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する指定計画相談支援の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(以下「業務継続計画」という。)を策定し、当該業務継続計画に従い必要な措置を講じなければならない。
2 指定特定相談支援事業者は、従業者に対し、業務継続計画について周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的に実施しなければならない。
3 指定特定相談支援事業者は、定期的に業務継続計画の見直しを行い、必要に応じて業務継続計画の変更を行うものとする。
「1.BCPを策定すること」「2.職員への周知と研修・訓練の実施」「3.定期的なBCPの見直しと必要に応じた変更」を行うことが事業所の義務であることが明記されています。
BCPは継続的な見直しが必要
BCPは作って終わりではなくブラッシュアップし続けることが大切です。
運営基準においても定期的な見直し・変更を行うことが定められています。
BCPは次の5つの工程を繰り返し行うことで、より実用的かつ安全性の高いBCPの作成を目指します。
- 基本方針の決定
- BCPの作成
- 計画の実施と運用
- 研修・訓練
- 点検・是正(見直し)
BCPを策定できてないと業務継続計画未策定減算の対象に
業務継続計画(BCP)を策定していない場合、2024年度報酬改定により新設された「業務継続計画未策定減算」が適用となります。
所定の要件を満たしていない場合、所定単位数の1%が減算されるため、制度上もBCP策定は実質的な義務として位置づけられています。
- 業務継続計画(BCP)を策定し、業務継続計画に従い、必要な措置を講じなければならない
BCP(業務継続計画)の策定・運用のポイント
ここからは、「障害福祉サービス事業所等における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」をもとに、BCPの策定・運用のポイントを解説していきます。
感染症BCPのポイント
感染症BCPを策定・運用する際は以下のポイントを意識すると良いでしょう。
①情報共有と役割分担、判断ができる体制の構築
感染(疑い)者発生時の迅速な対応には、平時と緊急時の情報収集・共有体制や、情報伝達フロー等の構築がポイントとなります。
そのためには、以下の3点を事前に行っておくことが重要です。
- 全体の意思決定者の決定
- 各業務の担当者の決定(誰が、いつ、何をするか)
- 事業所内外の関係者の連絡先、連絡フローの整理
➁感染(疑い)者が発生した場合の対応
相談支援は利用者様やその家族の生活を継続する上で欠かせないものであり、感染(疑い)者が発生した場合でも、利用者様に対して必要なサービスが継続的に提供されることが重要です。
そのため、感染(疑い)者発生時の対応について整理し、平時からシミュレーションを行うことで、いざという時にスムーズに行動ができます。
③職員確保
感染症が流行すると、職員が感染症にかかり人員が不足することがあります。
人員不足により予定していたサービスを提供できなくなる事態を防ぐためにも、日々の適切なケアだけではなく、感染対策の観点からも職員の確保は非常に重要です。
そのため、事業所内での職員配置や代替要員の準備を検討し、必要に応じて関係団体や都道府県への早めの応援依頼を行うことが大切です。
④業務の優先順位の整理
感染症により職員が不足した場合でも、感染防止対策を行いつつ、限られた職員でサービス提供を継続する必要があります。
そのため、重要業務を継続することを念頭に、職員の出勤状況に応じて対応できるよう、業務の優先順位を整理しておくことが重要です。
⑤計画を実行できるよう普段からの周知・研修、訓練
BCPは作成するだけではなく、実行できるように備えておくことが大切です。
緊急時でも迅速に行動できるよう、普段から関係者への周知や、研修、訓練(シミュレーション)を行う必要があります。
さらに、これらを通じて発見した課題に対して対策を講じていくことで、より現実的で実効性のあるBCPにすることが可能です。
また、最新の知見等を踏まえ、定期的な見直しを行うことも重要です。
自然災害BCPのポイント
自然災害BCPを策定・運用する際は以下のポイントを意識すると良いでしょう。
①正確な情報集約と判断ができる体制の構築
災害発生時の迅速な対応には、平時と緊急時の情報収集・共有体制や、情報伝達フロー等の構築がポイントとなります。
そのためには、以下の3点を事前に行っておくことが重要です。
- 全体の意思決定者の決定
- 各業務の担当者の決定(誰が、いつ、何をするか)
- 事業所内外の関係者の連絡先、連絡フローの整理
➁自然災害対策を「事前の対策」と「被災時の対策」に分けて準備する
自然災害対策では「事前の対策」と「被災時の対策」に分けて準備を進めることが大切です。
自然災害の「事前の対策(今何をしておくか)」については次のことが考えられます。
- 設備・機器・什器の耐震固定
- インフラが停止した場合のバックアップ
また、「被災時の対策(災害時どう行動するか)」については次の内容を整備しておくとよいでしょう。
- 人命安全のルール策定と徹底
- 事業復旧に向けたルール策定と徹底
- 初動対応
- 利用者・職員の安全確保・安否確認
- 建物・設備の被害点検
- 職員の参集
③業務の優先順位の整理
事業所や職員の被災状況によっては、限られた職員でサービス提供を継続する必要があることも想定されます。
そのため、重要業務を継続することを念頭に職員の出勤状況、被災状況に応じて対応できるよう、業務の優先順位を整理しておくことが重要です
④計画を実行できるよう普段からの周知・研修、訓練
BCPは作成するだけではなく計画を実行できるように備えておくことが大切です。
緊急時でも迅速に行動できるよう、普段から関係者への周知や、研修、訓練(シミュレーション)を行う必要があります。
さらに、これらを通じて発見した課題に対して対策を講じていくことで、より現実的で実効性のあるBCPにすることが可能です。
また、最新の知見等を踏まえ、定期的な見直しを行うことも重要です。
計画相談支援のBCP(業務継続計画)に記載する項目
計画相談支援のBCP(業務継続計画)に記載する項目について、厚生労働省が公開する『介護施設・事業所における感染症発生時の業務継続ガイドライン』および『介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン』の内容に沿って解説していきます。
感染症BCPに記載する項目
相談支援の感染症BCPに記載する項目は次の通りです。
| 分類 | 項目 | 内容 |
|---|---|---|
| 1.総則 | - |
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| 2.平常時の対応 | (1)体制構築・整備 |
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| (2)情報の共有・連携 |
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| (3)感染防止に向けた取組の実施 |
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| (4)防護具、消毒液等備蓄品の確保 |
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| (5)職員対応(事前調整) |
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| (6)業務調整 |
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| (7)研修・訓練の実施 |
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|
| (8)BCPの検証・見直し |
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| 3.感染疑い事例の発生 | - |
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| 4.初動対応 | (1)第一報 |
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| (2)感染疑い者への対応 |
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| (3)消毒、清掃等の実施 |
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| 5.検査 | - |
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| 6. 感染拡大防止体制の確立 | (1)保健所との連携 |
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| (2)濃厚接触者への対応 |
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| (3)職員の確保 |
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| (4)防護具、消毒液等の確保 |
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| (5)情報共有 |
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| (6)業務内容の調整 |
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| (7)過重労働・メンタルヘルス対応 |
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|
| (8)情報発信 |
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自然災害BCPに記載する項目
自然災害BCPに記載する項目は次の通りです。
| 分類 | 項目 | 内容 |
|---|---|---|
| 1.総論 | (1)基本方針 | 事業所としての災害対策に関する基本方針 |
| (2)推進体制 | 平常時の災害対策の推進体制 | |
| (3)リスクの把握 | ①ハザードマップなどの確認
②被災想定 |
|
| (4)優先業務の選定 | ①優先する事業
②優先する業務 |
|
| (5)研修・訓練の実施、BCPの検証・見直し | ①研修・訓練の実施
②BCPの検証・見直し |
|
| 2.平常時の対応 | (1)建物・設備の安全対策 | ①人が常駐する場所の耐震措置
②設備の耐震措置 ③水害対策 |
| (2)電気が止まった場合の対策 | ①自家発電機が設置されていない場合
②自家発電機が設置されている場合 |
|
| (3)ガスが止まった場合の対策 | 長期間のガスの停止を想定した、備蓄やガスコンロの代替品など | |
| (4)水道が止まった場合の対策 | それぞれ「確保策」「削減策」を記載
①飲料水 ②生活用水 |
|
| (5)通信が麻痺した場合の対策 | 被災時に施設内で実際に使用できる方法(携帯メール)など | |
| (6)システムが停止した場合の対策 | 電力供給停止などによりサーバ等がダウンした場合の対策やデータ類の喪失に備えたバックアップ等の方策 | |
| (7)衛生面(トイレ等)の対策 | ①トイレ対策
②汚物対策 |
|
| (8)必要品の備蓄 | ①在庫量、必要量の確認
└被災時の備品リスト(別紙として添付も可) |
|
| (9)資金手当て | 災害に備えた資金手当て(火災保険など)、緊急時に備えた手元資金等(現金) | |
| 3.緊急時の対応 | (1)BCP発動基準 | 状況別(地震の場合、水害の場合等)に分けたBCPを発動する基準 |
| (2)行動基準 | 発生時の個人の行動基準 | |
| (3)対応体制 | 対応体制や各班の役割や代替者を含めたメンバー | |
| (4)対応拠点 | 緊急時対応体制の拠点となる候補場所 | |
| (5)安否確認 | ①利用者の安否確認
②職員の安否確認 |
|
| (6)職員の参集基準 | 発災時の職員の参集基準を記載 | |
| (7)施設内外での避難場所・避難方法 | 地震などで一時的に避難する施設内・施設外の場所や垂直避難の方策 | |
| (8)重要業務の継続 | 平常時の対応で選定した優先業務から特に重要な業務の継続方法 | |
| (9)職員の管理 | ①休憩・宿泊場所
②勤務シフト |
|
| (10)復旧対応 | ①破損個所の確認
②業者連絡先一覧の整備 ③情報発信(関係機関、地域、マスコミ等への説明・公表・取材対応) |
|
| 4.他施設との連携 | (1)連携体制の構築 | ①連携先との協議
②連携協定書の締結 ③地域のネットワーク等の構築・参画 |
| (2)連携対応 | ①事前準備
②入所者・利用者情報の整理 ③共同訓練 |
|
| 5.地域との連携 | (1)被災時の職員の派遣(災害福祉支援ネットワークへの参画や災害派遣福祉チームへの職員登録) | 災害派遣福祉チームのチーム員としての登録について |
| (2)福祉避難所の運営 | ①福祉避難所の指定
②福祉避難所開設の事前準備 |
相談支援事業で留意する事項
【平時からの対応】
- 災害発生時、優先的に安否確認が必要な利⽤者について、あらかじめ検討の上、利⽤者台帳等において、その情報がわかるようにしておくこと。(利⽤者台帳等は電子媒体として保存・管理し、災害の状況等に応じて加⼯できる等活⽤しやすい環境を整備しておくことや内容の変更がないかを定期的に確認し、適宜更新する体制をとることが望ましい。)
- 緊急連絡先の把握にあたっては、複数の連絡先や連絡手段(固定電話、携帯電話、メール等)を把握しておくことが望ましい。
- 平常時から地域の避難方法や避難所に関する情報に留意し、地域の関係機関(⾏政、自治会、職能・事業所団体等)と良好な関係を構築する。その上で、災害に伴い発生する、安否確認やサービス調整等の業務に適切に対応できるよう、他の相談支援事業所、障害福祉サービス事業所等、地域の関係機関と事前に検討・調整する。(【参考】を参照。)
- なお、避難先において、薬情報が参照できるよう、利⽤者に対し、おくすり手帳の持参指導を⾏うことが望ましい。
- 市町村と連携し、災害時避難⾏動要支援者である利⽤者の把握に努めること。また、自治体から依頼があった場合には、個別避難計画策定へ協⼒すること。個別避難計画、サービス等利⽤計画や利⽤者台帳間の情報連携を適切に図ること。
【災害が予想される場合の対応】
- 訪問系サービスや通所系サービス、居住系サービスについて、「台風などで甚大な被害が予想される場合などにおいては、サービスの休止・縮小を余儀なくされることを想定し、あらかじめその基準を定めておく」とされており、利⽤者が利⽤する各事業所が定める基準について、事前に情報共有し、把握しておくこと。その上で、必要に応じ、サービスの前倒し等も検討する。
- また、自サービスについても、台風などで甚大な被害が予想される場合などにおいては、休止・縮小を余儀なくされることを想定し、その際の対応方法を定めておくとともに、他の相談支援事業所、障害福祉サービス事業所等、地域の関係機関に共有の上、利⽤者やその家族にも説明する。
【災害発生時の対応】
災害発生時で、事業が継続できる場合には、可能な範囲で、個別訪問等による早期の状態把握を通じ、障害福祉サービス等の実施状況の把握を⾏い、被災生活により状態の悪化が懸念される利⽤者に対して、必要な支援が提供されるよう、障害福祉サービス事業所等、地域の関係機関との連絡調整等を⾏う。
(例)通所系・訪問系サービスについて、利⽤者が利⽤している事業所が、サービス提供を⻑期間休止する場合は、必要に応じて他事業所の通所系サービスや、訪問系サービス等への変更を検討する。
また、避難先においてサービス提供が必要な場合も想定され、居宅サービス事業所、地域の関係機関と連携しながら、利⽤者の状況に応じて、必要なサービスが提供されるよう調整を⾏う。
- 災害発生時で事業が継続できない場合には、市町村、他の相談支援事業所、障害福祉サービス事業所等、地域の関係機関と事前に検討・調整した対応を⾏う。
BCP(業務継続計画)の研修・訓練とは?
計画相談支援の運営基準にはBCP(業務継続計画)の研修及び訓練の実施が定められています。
ここでは、研修・訓練の実施内容の例をご紹介します。
BCPの研修の例
次は自然災害の研修の内容の例です。
| 研修項目 | 内容 |
|---|---|
| (1)防災意識の啓もう | 最近の事例を共有するなどにより、災害を理解 |
| (2)自宅の防災 | 家庭の防災を教育
例:家具の転倒防止、水・食料の備蓄など例:内閣府【防災シミュレーター】 |
| (3)ルールの徹底 |
|
| (4)安否確認の徹底 | 災害発生時の安否の連絡手段を学習 |
BCP訓練の例
BCP訓練では机上訓練(実際の行動を伴わない訓練)と実地訓練の両方を行います。
BCP訓練では次のような内容を実施します。
| 訓練の種類 | 内容 |
|---|---|
| (1)参集訓練 | 夜間、休日を想定し、対策本部員が事業所へ参集
※対策本部員向け |
| (2)対策本部設置訓練 | 災害が発生した想定で、対策本部を設営
※対策本部員向け |
| (3)机上訓練(イメージ・トレーニング) | 災害発生から復旧までの流れを机上で確認
※対策本部員向け |
| (4)安否確認訓練 | 施設内・外の職員等の安否を実際に確認 |
| (5)実働訓練(実地) | 機器の操作等、マニュアルに沿って実際に実施 |
| (6)総合訓練 | 地域等と協力し、一連の流れを確認 |
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まとめ
ここまで、相談支援のBCPの基本やBCPの策定・運用のポイント、BCPに記載するべき項目、BCPの研修・訓練の内容などを解説してきました。
相談支援事業所にはBCPの策定が義務付けられています。
また策定後も、研修・訓練、検証、見直しを重ねていき、地域の実状や事業所の体制に即して継続的に更新していくことが求められます。
BCPは緊急時にも業務を安全に継続するために大切な計画なので、実用的なBCPにアップデートしていくことが大切です。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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