障害福祉事業の開業・運営・請求などに関するお役立ち情報を発信しています!

生活介護事業所の立ち上げ・開業を検討している皆様の中には、「生活介護事業所を立ち上げるにはどうすればいいの?」や「事業所を立ち上げるための条件や必要な資格は何?」などといったお悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、生活介護の事業所を開業するまでの流れや、立ち上げに必要な資格、生活介護の市場の動向などについてご紹介していきます。
生活介護事業とは?
生活介護事業とは、障害のある方を対象に、主に食事・入浴・排泄の介助や、掃除・洗濯・調理などの生活援助を提供する障害福祉サービスです。
支援内容については、日常生活の介助のほかにも、絵画制作や手工芸品作成といった生産活動を提供するなど、介護の度合いが高く就労継続支援A型・B型を利用することができない方でも働く機会を得ることができます。
生活介護事業の対象者
生活介護事業の対象者は以下の通りです。
年齢 | 施設入所支援の併用 | 障害支援区分 |
---|---|---|
50歳未満 | なし | 区分3以上 |
あり | 区分4以上 | |
50歳以上 | なし | 区分2以上 |
あり | 区分3以上 |
身体障害や知的障害、精神障害など、さまざまな障害をお持ちの方が生活介護のサービスを利用しています。
生活介護事業の需要と市場の動向
生活介護事業を立ち上げようと考えている方の中には、生活介護事業の需要や市場の動向が気になっている方もいらっしゃるかもしれません。
生活介護事業の利用実人員数は、2014年から2023年にかけて増加傾向にあります。
また、生活介護の事業所数についても同様の傾向が見られます。
生活介護事業は儲かるの?
厚生労働省の「令和5年度障害福祉サービス等経営実態調査」によると、収入と支出の差を表す収支差率(物価高騰対策・新型コロナウイルス感染症関連の補助金を含む)の全国平均は、2022年度の決算において生活介護が「8.5%」です。
収支差率とは、事業全体の利益が収益(売上)に対してどれくらいなのかを表す指標です。
収支差率がマイナスの場合は赤字経営だったことを、収支差率がプラスの場合は黒字経営だったことを示します。
同水準の事業所数の障害福祉サービスのうち、例えば相談支援事業(計画相談支援)が「5.6%」、就労継続支援B型が「5.8%」となっています。
サービス種別 | 収支差率の平均(2022年度決算) |
---|---|
生活介護 | 8.5% |
相談支援事業(計画相談支援) | 5.6% |
就労継続支援B型 | 5.8% |
また、令和4年度の生活介護事業所の収支差率の分布を見ると、収支差率が0%を超える事業所も多く存在することから、生活介護事業は『十分に利益が出る可能性のある事業』と言えるでしょう。
生活介護事業の収益構造
生活介護事業では、サービス提供を行った対価として得る「障害福祉サービスの報酬」が主な収入になります。障害福祉サービスの報酬の構造は、
- 基本報酬
- 加算・減算
に分類することができます。
基本報酬に対して加算や減算の項目を加減した金額を算出し、負担割合に応じてサービス利用者の方と国保連(国民健康保険団体連合会)に対して請求を行うことになります。
まず「1.基本報酬」については、以下の3つの観点で報酬が算定されます。
- 利用定員
- 障害支援区分
- サービス提供時間
例えば、利用定員が21人以上、30人以下の場合、単位数は以下の対応表の通りです。
所要時間 | 障害支援区分 | ||||
---|---|---|---|---|---|
区分6 | 区分5 | 区分4 | 区分3 | 区分2以下 | |
3時間未満 | 449単位 | 333単位 | 228単位 | 204単位 | 185単位 |
3時間以上
4時間未満 |
575単位 | 427単位 | 293単位 | 262単位 | 236単位 |
4時間以上
5時間未満 |
690単位 | 512単位 | 351単位 | 313単位 | 284単位 |
5時間以上
6時間未満 |
805単位 | 597単位 | 409単位 | 366単位 | 332単位 |
6時間以上
7時間未満 |
1,120単位 | 833単位 | 570単位 | 510単位 | 463単位 |
7時間以上
8時間未満 |
1,150単位 | 854単位 | 584単位 | 523単位 | 475単位 |
8時間以上
9時間未満 |
1,211単位 | 915単位 | 646単位 | 584単位 | 536単位 |
次に「2.加算・減算」について、一定の条件を満たすことで得られる報酬が「加算」、本来満たすべき人員基準や設備基準などを満たさない場合に適用されるのが「減算」になります。
「加算」については、様々な種類が存在し、利用者が新規でサービスを利用開始した日から30日以内に算定できる初期加算や、特定の資格を持つ従業員を配置することで得られる福祉専門職員配置等加算などがあります。
生活介護事業の開業・立ち上げに必要な条件・資格
生活介護事業の経営者になるために持っていなければならない資格はありません。
ただし、生活介護事業を開業・運営していくためには、法人格を有した上で3つの条件を満たしている必要があります。
- 法人格を有している
- 人員基準を満たす
- 設備基準を満たす
- 運営基準を満たす
それぞれ詳しく解説していきます。
条件1:法人格を有している
生活介護事業は個人事業主では運営することができないため、株式会社、合同会社、一般社団法人、NPO法人といった法人格を取得する必要があります。
法人形態については、それぞれにメリット・デメリットがあるので、準備できる資金、開業後に運営する中での意思決定のしやすさや資金調達方法の幅広さなどを踏まえて最適な法人格を選ぶようにしましょう。
例えば、株式会社は合同会社と比べると、社会的な信用も高く、株を発行して資金調達ができる一方で、設立までの手続きが多く、設立にかかる費用も高くなります。
条件2:人員基準を満たす
生活介護事業の人員基準には、生活介護を開業・運営する上で必要な職種や配置人数が定められています。
人員基準を満たさないと事業所を開業することはできず、開業後も基準を満たし続ける必要があります。
満たさない場合は報酬の減額や行政指導につながる場合もあるので注意が必要です。
例として、特定生活介護・障がい児生活介護における人員基準は以下です。
職種 | 必要な人数 | 常勤要件 | 備考 |
---|---|---|---|
管理者 | 1名以上 | なし | |
サービス管理責任者 | 1名以上 | あり | ・前年度の平均利用者が60人以下の場合は常勤で1人以上が必要
・前年度の平均利用者が61人以上の場合は常勤で1人に加えて40:1の割合で人員が必要 |
医師 | ※未配置の場合減算 | なし | 嘱託可能 |
看護職員 | 1名以上 | なし | |
理学療法士または作業療法士 | ※必要に応じて配置 | なし | 機能訓練を行う場合は配置が必要 |
生活支援員 | 1名以上 | あり | 1名以上、常勤での配置が必要 |
平均障害支援区分 | 必要な人員の総数(常勤換算) |
---|---|
区分4未満 | 6:1 |
区分4以上5未満 | 5:1 |
区分5以上 | 3:1 |
例えば、平均障害区分が4以上5未満の場合、利用者5人に対して常勤換算で1名以上の「看護職員」「理学療法士または作業療法士」「生活支援員」の配置が必要になります。
条件3:設備基準を満たす
生活介護の設備基準には、生活介護を開業・運営するにあたって必要な設備や備品が定められています。
開業前に行う指定申請では、設備・備品などの一覧表や建物の平面図などを通して、設備基準をクリアできているかどうかが審査されることになります。
生活介護の設備基準に定められている設備や備品は以下の通りです。
設備名 | 設備基準 |
---|---|
訓練・作業室 | ・訓練や作業に支障がない広さにする
・訓練や作業に必要な機械・器具を備える |
相談室 | 室内において話し声が漏れないような工夫をする(仕切りを設けるなど) |
洗面所・トイレ | ・サービス利用者の特性に応じたものにする
・洗面所とトイレの兼用は不可 |
多目的室 | ・サービス利用者の特性に応じたものにする |
条件4:運営基準を満たす
生活介護事業を運営するためには、サービスの利用にあたっての留意事項や緊急時における対応方法などの運営規程を定めておく必要があります。
定めなければならない運営規程には以下のようなものがあります。
【事業の運営についての重要事項に関する運営規程】
- 事業の目的や運営の方針
- 従業員の職種や人数、職務の内容
- 営業日や営業時間
- サービス利用者から受領する費用の種類や金額
- サービスの利用にあたっての留意事項
- 緊急時などにおける対応方法
- 非常災害対策
- 事業の対象となる障害の種類
- 虐待防止のための措置
- その他運営に関する重要事項
開業までに対応しなければならない事項も多いため、余裕をもって準備を進めましょう。
生活介護事業の開業・立ち上げに必要な資金
生活介護を開業するために必要な資金は、約1,000万円と言われています。
内訳としては、設備・備品購入費や採用費といった開業前にかかるお金と、人件費や家賃・水道光熱費などの開業後にかかるお金の2つに分けられます。
こうした開業・立ち上げのための資金を自己資金だけで準備するのは困難な場合が多いため、金融機関などから借入を行い、資金調達をするケースが多いようです。
必要な資金の内訳について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
生活介護事業の開業・立ち上げの流れ
生活介護事業の開業は以下のようなステップで進めます。
【生活介護の開業までのステップ】
- 法人設立
- 事業計画書の作成
- 開業のための資金の調達
- 物件探し・契約
- 従業員の採用
- 物件のリフォーム
- 備品の調達
- 指定申請
- 請求ソフトの手配
- 利用者様の獲得
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ステップ1:事業計画書の作成
事業計画書には、どのような事業を行うのかを示した事業方針や、競合となる事業所に関する情報、収支の見通しなどを記していきます。
事業計画書は、主に指定申請や金融機関から資金を借り入れる際に使用される書類です。
計画の内容が非現実的な場合は、指定申請で開業を認められない可能性や金融機関から融資を受けられない可能性などがあります。
経営者としても、この事業計画を踏まえて事業を運営していくことになるので、できる限り綿密な計画を作成するようにしましょう。
ステップ2:法人設立
まず、会社の目的や役員、株主などを決めます。その上で、役員の同意書や定款などの登記に必要な書類を作成していきます。
書類の準備ができたら、書類を管轄の法務局へ提出し、法務局の審査を受けます。無事に審査を通過し、登記に必要な税金を納付できたら手続きは完了です。
税金については、例えば株式会社を設立する場合だと、印紙税や登録免許税などを合わせて20万円前後の費用が発生します。
また、登記手続きにおいては書類の不備がある度に、修正して書類を再提出する必要があります。
何度も法務局に行く時間を確保できない方は、行政書士などの専門家のサポートを受けるとよりスムーズに手続きを進めることができます。
ステップ3:開業のための資金の調達
生活介護の開業には、法人設立費、物件準備にかかる費用、内装施工費、人件費などで、一般的に『1,000万円』ほどの資金が必要になります。
一方で、そのすべてを自分の貯蓄だけでカバーできる人は少ないでしょう。
開業に必要な資金を自分の貯蓄だけで準備できない場合は、金融機関などから借り入れを受けるケースが多いです。
生活介護事業の資金調達方法について、 詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ステップ4:物件探し・契約
生活介護事業では、事務室や相談室など設備基準を満たすことができる物件を探す必要があります。
また、設備基準以外にも、現実的に支払い可能な賃料の条件や、サービスを利用する方々がアクセスしやすい立地の条件などを踏まえて物件を探していきます。
物件を探す方法として、インターネットや開業予定地域の不動産会社への相談なども行い、幅広く情報を集めましょう。
ステップ5:従業員の採用
生活介護事業として「指定」を受けるためには、人員基準を満たさなければなりません。
そのため、ステップ8にて解説する指定申請を行う前の段階で、求人を行い、従業員を採用しておく必要があります。
生活介護事業で必要な従業員数は、どれほどのサービス利用者数を見込んでいるかによっても変動するので、事業計画を踏まえて採用人数の目安を決めていきます。
採用方法としては、ハローワークや求人雑誌のほかに、インターネットの求人広告や人材紹介などが存在します。採用に使える費用も踏まえながら採用方法を決めるようにしましょう。
ステップ6:物件のリフォーム
生活介護事業の「設備基準」を満たすために、訓練・作業室や相談室間の仕切りの設置、洗面所やトイレの増設など、必要に応じて物件をリフォームする必要があります。
また、「設備基準」を満たすことができていても、サービスを利用する方にとってより居心地のよい環境になるように、壁紙の張替えなどのリフォームの実施も想定しておく必要があります。
ステップ7:備品の調達
生活介護事業所で働く従業員が使用するものとして、電話やFAX、オフィスデスクやオフィスチェア、パソコンやタブレットなどの通信機器といった備品が必要です。
また、サービスを利用する方々が使用するものとして、作業用具や机、いす、ティッシュやトイレットペーパーなどの消耗品の準備も必要です。
納品に時間がかかる場合もあるので、計画的に準備を進めていきましょう。
ステップ8:指定申請
生活介護事業を開業するためには、「指定申請」という手続きを行い、管轄の自治体より許認可を得る必要があります。
指定申請手続きでは、各自治体によって定められている必要書類を準備・提出します。
申請書類が受理されてから指定され、開業が可能になるまでの期間は指定権者によって違いはありますが、おおむね1~2か月程度を要します。
また、指定申請の前段階として「事前相談」が必要となるケースもあるので、開業を希望する月の『3か月前〜6か月前』までには一度、管轄の自治体の担当窓口へ相談するようにしましょう。
生活介護の指定申請に必要な書類の一覧
生活介護を開業する際に必要な書類の例をご紹介します。
【生活介護の指定申請書類の例】
- 指定協議事前調査シート
- 事業計画書
- 支援方法・組織体制の内容
- 収支予算書
- 運営規定
- 事業所一覧
- 社会福祉施設等における耐震化状況調査票
- 社会保険及び労働保険の加入状況にかかる確認票
- 法人登記簿謄本
- 誓約書
自治体によって必要な書類が異なる場合もあるので、詳しくは管轄の自治体の窓口やホームページで確認するようにしましょう。
ステップ9:業務支援システムの手配
生活介護では、サービス提供の対価を得るために、国保連とサービスを利用した方々へ請求する必要があります。
請求業務をスムーズに行うためにも、サービスを利用する方々への支援記録の管理ができる業務支援ソフトの導入を検討しましょう。
業務支援ソフトの機能としては、支援記録の作成や個別支援計画の管理、利用者への交付書類の管理などが中心で、ほかにも様々な機能があります。
料金や機能の種類はソフトによって異なるため、複数のソフトを比較しながら導入するソフトを決めていきましょう。
ステップ10:サービス利用者の獲得
開業する日が決まったら、開業日に向けて、事業所紹介用のパンフレットや名刺、ホームページなどを作成し、サービスを利用する方々の獲得を目的にした集客を開始しましょう。
集客方法としては、病院や地域の保健所、保健センターなどの関係機関への営業活動やSNSを活用した情報発信、WEB広告などが考えられます。
予算も踏まえながら、可能な範囲で集客活動を実施していきましょう。
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まとめ
ここまで、生活介護事業を開業するまでの流れや、立ち上げに必要な資格、生活介護の市場動向などについてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
生活介護事業を開業するためには、物件探しから資金調達、従業員の採用までやることがたくさんあり、時間もかかります。
まずは開業に向けてやらなければならないことをリストアップし、優先順位をつけた上でスケジュールを立てるところから始めてみるのがおすすめです。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
事業者への記録・請求ソフト導入支援経験者や、障害福祉・介護業界に長く携わるメンバーが在籍。障害福祉サービス事業所の開業、経営、日々の運営業務に役立つ情報を発信しています。
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