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就労継続支援A型などの障害福祉サービスを開業するには、所轄の行政庁で指定申請を行い、営業許可を得る必要があります。
また、立ち上げのための資金が自己資金だけでは不足している場合、金融機関などからの借り入れなどが必要になる場合も多いです。
これら指定申請や金融機関などからの借り入れの際に必要になるのが事業計画書です。
しかし、初めての立ち上げだと「事業計画書で何を書いたらいいか分からない」という不安をお持ちの方も少なくないでしょう。
特に、就労継続支援A型では事業者がサービス利用者と雇用契約を結び、最低賃金以上の給与を支払わなければならないこともあり、事業計画書には指定基準を満たした収支計画を記載する必要があります。
この記事では、就労継続支援A型の開業・立ち上げを検討している方に向けて、事業計画書の書き方を解説していきます。
本記事の後半では、事業計画書のテンプレートを無料でダウンロードすることもできますのでぜひご活用ください。
就労継続支援A型の事業計画書はなぜ必要?
就労継続支援A型の事業を立ち上げる際に事業計画書を書くのには、大きく3つの理由があります。
- 金融機関への融資を申請する際に提出するため
- 事業者としての指定を受ける際に提出するため
- 経営者として事業の見通しを立てるため
背景を理解した上でよりよい事業計画書を書くために、それぞれの理由について詳しくご紹介していきます。
金融機関への融資を申請する際に提出するため
立ち上げに必要な資金は、金融機関などから借り入れて補うケースも多いようです。
その場合、金融機関側としては貸し付けたお金の利子の支払いや元本の返済が可能なのかどうかを判断しなければなりません。
その際に必要なのが事業計画書です。
そのため、たとえ障害福祉サービスに詳しくない人が見ても内容が伝わる事業計画書を作成する必要があります。
事業者としての指定を受ける際に提出するため
就労継続支援A型の事業を開業する際には、所轄の行政庁に対して指定申請を行い、事業者としての指定を受ける必要があります。
申請の際には複数の書類の提出が求められ、そのうちの1つとして事業計画書を提出しなければならないのです。
指定を判断する行政庁の担当者は事業計画書を通じて、主に開業後も継続的に運営していけるのかどうかを確認します。
したがって、事業計画書では具体的な収支計画や事業展開の展望などを記載し、開業後も運営の見通しが立っていることを示す必要があります。
経営者として事業の見通しを立てるため
就労継続支援A型事業の開業を行う際、まずは開業することも重要ですが、それ以上に開業後も安定した事業運営を続けていくことが重要です。
そのためには、事業計画書の作成を通じて収益の予測を適切に立て、事業の見通しを持つ必要があります。
就労継続支援A型の事業計画書の書き方
指定申請を行う行政庁の担当者や金融機関の窓口担当者といった主要な想定読者を踏まえたうえで、事業計画書に書くべき内容をまとめました。
事業計画書に書くべき内容には明確なルールは存在せず様々な型があるので、事業計画書に一般的に書いたほうが良いと言われている項目に絞ってご紹介していきます。
経営者の経歴
履歴書のように経歴をただただ箇条書きで記載するのではなく、職務経歴書のように就労継続支援A型の領域で活かせる自分自身のスキルや経験をアピールするように記載しましょう。
特に、今後は就労継続支援A型の事業を経営していくことになるので、経営者としての素質をアピールできるような内容も記載できると良いでしょう。
創業の経緯・動機
どのような動機から就労継続支援A型の事業を起業しようとしたのかを記載します。
特に、過去にどのような経験があったから起業しようとしたのか、また、現時点でどのような内容の事業をしたいのか、どのような事業を今後展開していきたいのかといった「過去ー現在ー未来」の流れで記載すると、より伝わりやすい内容になります。
事業内容
具体的にどのような事業内容の就労継続支援A型を開業するのかを記載します。
どのような事業コンセプトにしたいのかが明確に伝わるように記載することが重要です。
- どれほどの規模の事業所にするのか
- サービス利用者の生産活動は何にするのか(お菓子やパンなどの製造、パソコンによるデータ入力作業など)
- サービス利用者の求職活動の支援として具体的に何をするのか
- サービス利用者を送迎するのかどうか など
商圏調査の内容(市場分析等)
就労継続支援A型事業において、立地の条件は利用者が集まりやすいかどうかを予測する上で非常に重要な観点です。
具体的には「事業所へのアクセスの良し悪し」や「周囲の競合となる事業所の有無」、「就労継続支援A型に通所し得る人の数」などを商圏調査として確認できると良いでしょう。
指定申請や融資の面接においても、事業所を開設する場所については具体的な数値や根拠を踏まえて説明することが重要です。
人材採用
どのような職種、また、どのような資格を持った人をそれぞれ何人雇用するのかを記載します。
従業員に関する情報については、事業計画書内に記載する「提供するサービスや事業の内容」や「資金の内訳」など他の項目の記載内容とズレが生じないように注意が必要です。
資金調達計画
まず、就労継続支援A型を立ち上げるためにどのタイミングでどれほどの資金が必要なのかを計算します。
例えば、開業するには法人設立費や物件の準備費用、備品代やスタッフの採用費などが発生します。
開業に必要な資金の総額が算出できたら、どのようにしてそれらの開業資金を調達するのかを計画します。
自己資金だけでは不足する場合、金融機関などから借り入れを行ったり、補助金を活用するなどして開業資金を補う必要があります。
損益計画
将来的にどれほどの収入と支出を見込んでいるのかを説明するようにしましょう。
特に、就労継続支援A型においては、サービスを利用する方への賃金の支払いについて、基準省令第192条第2項で次のように規程されています。
《基準省令第192条第2項(意訳)》
引用元:基準省令第192条第2項
指定就労継続支援A型事業者は、生産活動に係る事業の収入から生産活動に係る事業に必要な経費を控除した額に相当する金額が、利用者に支払う賃金の総額以上となるようにしなければならない。
つまり、サービスを利用する方々の生産活動によって発生した売上のうち、経費を差し引いた利益だけで、最低賃金以上の給与を支払える状態でなければならないということです。
より具体的には、事業計画書上では次の(1)が(2)よりも大きいことを示す必要があります。
- (1)サービス利用者の生産活動で発生した利益
- (2)サービス利用者に支払う給与
(売上)
・1案件で平均1時間かかり、報酬は1,600円:1,600円 / h
・1営業日あたり6時間の通所:6時間 × 1,600円 / h = 9,600円 / 日
・毎月20営業日で、平均20人が通所:9,600円 / 日 × 20日 × 20人 = 384万円 / 月
・年換算する:384万円 / 月 × 12ヵ月 = 4,608万円 / 年
(経費)
・減価償却費(パソコン代):1,200万円(100万円 / 月 × 12ヵ月)
・家賃・水道光熱費:300万円(25万円 / 月 × 12ヵ月)
・その他費用:120万円(10万円 / 月 × 12ヵ月)
・合計:1,620万円 / 年
(利益)
・売上 - 経費:2,988万円 / 年
・平均の日給:6,000円 / 日
・1年間の合計の給与:6,000円 / 日 × 20日 × 20人 ×12ヵ月:2,880万円 / 年
上記のケースであれば、生産活動の利益である(1)が、サービスを利用する方々へ支払う給与の(2)を超えているので指定基準を満たすことになります。
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まとめ
ここまで、就労継続支援A型における事業計画書の書き方について解説してきました。事業計画書の内容がしっかりとしていると、指定申請や融資を受ける際に、スムーズに審査を終えることができます。
また、開業後の安定的な事業運営において事業計画書は重要な役割を果たします。就労継続支援A型の開業にあたって、まずは事業計画書の作成から取り掛かるようにしましょう。
今回のコラムでご紹介した内容が、みなさまの開業準備のお役に立てば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。
事業者への記録・請求ソフト導入支援経験者や、障害福祉・介護業界に長く携わるメンバーが在籍。障害福祉サービス事業所の開業、経営、日々の運営業務に役立つ情報を発信しています。
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