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相談支援事業所の立ち上げ・開設を検討している皆様の中には、「相談支援事業所を立ち上げるにはどうすればいいの?」や「事業所を立ち上げるための条件や必要な資格は何?」などといったお悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事では、相談支援の事業所を開業するまでの流れや、立ち上げに必要な資格、相談支援の市場の動向などについてご紹介していきます。
相談支援事業とは?
相談支援事業とは、障害のある方が普段の生活を送る中で直面した不安や困りごとに関して、相談や助言を行う障害福祉サービスです。
「世の中にはどのような障害福祉サービスが存在するのか」、また、置かれている環境や障害の状況を踏まえた時に「どういった障害福祉サービスがマッチするか」などの相談や助言も行います。
相談支援事業の種類とは?
相談支援事業には、「地域相談支援(一般相談支援)」「計画相談支援(特定相談支援)」「障害児相談支援」の3種類の事業が存在します。
「地域相談支援」では、基本相談支援と地域相談支援を行います。また、「計画相談支援」では、同じく基本相談支援は行いますが、地域相談支援は行わず、代わりに計画相談支援を行います。
「障害児相談支援」では、障害児支援利用援助と継続障害児支援利用援助の支援を行います。
それぞれの支援内容の詳細は以下のとおりです。
支援内容 | 具体的な支援内容 |
---|---|
基本相談支援 | 障害のある方の日常生活に関するさまざまな困りごとや不安に関して相談や助言を行います。
また、必要に応じて「一般相談支援」や「特定相談支援」など適切な相談支援事業につなげます。 |
地域相談支援 | ・地域移行支援:
障害者支援施設や病院などから退所・退院する方向けに住居支援をするといった地域生活準備のサポートをします。 ・地域定着支援: 緊急事態が発生したときの関係機関への連携など、地域で自立した生活が送れるようサポートをします。 |
計画相談支援 | ・サービス利用支援:
障害福祉サービスの利用申請に必要な「サービス等利用計画案」や実際の計画を作成します。 ・継続サービス利用支援: 一定期間ごとに利用状況のモニタリングを行い、必要に応じて「サービス等利用計画」の見直しを行います。 |
障害児支援利用援助 | 本人またはご家族の意向を踏まえて適切なサービスを組み合わせ、「障害児支援利用計画案」や実際の計画を作成します。 |
継続障害児支援利用援助 | 一定期間ごとに利用状況のモニタリングを行い、必要に応じて「障害児支援利用計画」の見直しを行います。 |
相談支援事業の需要と市場の動向
相談支援事業を立ち上げようと考えている方の中には、相談支援事業の需要や市場の動向が気になっている方もいらっしゃるかもしれません。
相談支援事業の利用実人員数は、2014年から2023年にかけて増加傾向にあります。
相談支援事業は儲かるの?
厚生労働省の「令和5年度障害福祉サービス等経営実態調査」によると、収入と支出の差を表す収支差率(物価高騰対策・新型コロナウイルス感染症関連の補助金を含む)の全国平均は、2022年度の決算において地域相談支援(地域移行支援+地域定着支援)が「0.4%」、計画相談支援が「5.6%」、障害児相談支援が「4.0%」となっています。
サービス種別 | 収支差率の平均(2022年度決算) |
---|---|
地域相談支援 | 0.4% |
計画相談支援 | 5.6% |
障害児相談支援 | 4.0% |
収支差率とは、事業全体の利益が収益(売上)に対してどれくらいなのかを表す指標です。
収支差率がマイナスの場合は赤字経営だったことを、収支差率がプラスの場合は黒字経営だったことを示します。
例として令和4年度の計画相談支援事業所の収支差率の分布を見ると、収支差率が15%を超える事業所も一定数存在することから、相談支援事業は『十分に利益が出る可能性のある事業』と言えるでしょう。
相談支援事業の収益構造
相談支援事業では、サービス提供を行った対価として得る「障害福祉サービスの報酬」が主な収入になります。障害福祉サービスの報酬の構造は、
- 基本報酬
- 加算・減算
に分類することができます。
基本報酬に対して加算や減算の項目を加減した金額を算出し、負担割合に応じてサービス利用者の方と国保連(国民健康保険団体連合会)に対して請求を行うことになります。
まず「1.基本報酬」について、報酬体系は事業の種類によって異なります。
例えば、計画相談支援や障害児相談支援では、基本的には「サービス等利用計画」や「障害児支援利用計画」の作成・変更の取扱件数に応じて、単位数が算出されます。
取扱件数は、「直近6ヵ月の取扱件数の平均値」を「直近6ヵ月の相談支援専門員数」で割った数です。
また、計画相談支援における取扱件数と単位数の対応は以下です。
取扱件数40未満の部分 | 取扱件数40以上の部分 | |
---|---|---|
サービス利用支援費 | (Ⅰ)1,572単位/月 | (Ⅱ)732単位/月 |
継続サービス利用支援費 | (Ⅰ)1,308単位/月 | (Ⅱ)606単位/月 |
もし、サービス利用支援費において取扱件数が50件だった場合、40件未満の部分、つまり39件分は「(Ⅰ)1,572単位/月」、残り11件分は「(Ⅱ)732単位/月」になります。
(Ⅰ)1,572単位 × 39件 + (Ⅱ)732単位 × 11件=69,360単位
事業所が属する地域によって1単位ごとに受け取れるお金の単価は決まっており、単位数が増えるほど事業所が受け取れる報酬も多くなるのです。
次に「2.加算・減算」について、一定の条件を満たすことで得られる報酬が「加算」、本来満たすべき人員基準や設備基準などを満たさない場合に適用されるのが「減算」になります。
「加算」については、様々な種類が存在し、中山間地域等に居住している方に対してサービスを提供した場合に加算される特別地域加算や、新規にサービス等利用計画を作成する場合に加算される初期加算などがあります。
相談支援事業の開業・立ち上げに必要な条件・資格
相談支援事業の経営者になるために持っていなければならない資格はありません。
ただし、相談支援事業を開業・運営していくためには、法人格を有した上で3つの条件を満たしている必要があります。
- 法人格を有している
- 人員基準を満たす
- 設備基準を満たす
- 運営基準を満たす
それぞれ詳しく解説していきます。
条件1:法人格を有している
相談支援事業は個人事業主では運営することができないため、株式会社、合同会社、一般社団法人、NPO法人といった法人格を取得する必要があります。
法人形態については、それぞれにメリット・デメリットがあるので、準備できる資金、開業後に運営する中での意思決定のしやすさや資金調達方法の幅広さなどを踏まえて最適な法人格を選ぶようにしましょう。
例えば、株式会社は合同会社と比べると、社会的な信用も高く、株を発行して資金調達ができる一方で、設立までの手続きが多く、設立にかかる費用も高くなります。
条件2:人員基準を満たす
相談支援事業の人員基準には、相談支援を開業・運営する上で必要な職種や配置人数が定められています。
人員基準を満たさないと事業所を開業することはできず、開業後も基準を満たし続ける必要があります。
満たさない場合は報酬の減額や行政指導につながる場合もあるので注意が必要です。
例として、特定相談支援・障害児相談支援における人員基準は以下です。
職種 | 人員基準 |
---|---|
管理者 | 専従で1人以上が必要
(管理上支障がなければ兼務可能) |
相談支援専門員 | 専従で1人以上が必要
(管理上支障がなければ兼務可能、また、1ヶ月平均の利用者の数が35件に対して1人の配置を標準) |
条件3:設備基準を満たす
相談支援の設備基準には、相談支援を開業・運営するにあたって必要な設備や備品が定められています。
開業前に行う指定申請では、設備・備品などの一覧表や建物の平面図などを通して、設備基準をクリアできているかどうかが審査されることになります。
相談支援の設備基準に定められている設備や備品は以下の通りです。
設備名 | 設備基準 |
---|---|
事務室 | ・鍵付き書庫を設置すること
・事務作業を行うためのスペースが確保されていること |
相談室 | 必要に応じてパーテーションを設置するなど、プライバシーに配慮していること |
条件4:運営基準を満たす
相談支援事業を運営するためには、サービスの利用にあたっての留意事項や緊急時における対応方法などの運営規程を定めておく必要があります。
定めなければならない運営規程には以下のようなものがあります。
【事業の運営についての重要事項に関する運営規程】
- 事業の目的や運営の方針
- 従業員の職種や人数、職務の内容
- 営業日や営業時間
- サービス利用者から受領する費用の種類や金額
- サービスの利用にあたっての留意事項
- 緊急時などにおける対応方法
- 非常災害対策
- 事業の対象となる障害の種類
- 虐待防止のための措置
- その他運営に関する重要事項
開業までに対応しなければならない事項も多いため、余裕をもって準備を進めましょう。
相談支援事業の開業・立ち上げに必要な資金
相談支援を開業するために必要な資金は、約800万円と言われています。
内訳としては、設備・備品購入費や採用費といった開業前にかかるお金と、人件費や家賃・水道光熱費などの開業後にかかるお金の2つに分けられます。
相談支援事業の開業前に発生する費用例
- 法人設立費
- 物件準備に必要な費用
- 内装施工費
- 備品費
- 採用費 など
相談支援事業の開業後に発生する費用例
- 人件費
- 家賃・水道光熱費
- 通信費 など
また、こうした開業・立ち上げのための資金を自己資金だけで準備するのは困難な場合が多いため、金融機関などから借入を行い、資金調達をするケースが多いようです。
相談支援事業の開業・立ち上げの流れ
相談支援事業の開業は以下のようなステップで進めます。
【相談支援の開業までのステップ】
- 事業計画書の作成
- 法人設立
- 開業のための資金の調達
- 物件探し・契約
- 従業員の採用
- 物件のリフォーム
- 備品の調達
- 指定申請
- 請求ソフトの手配
- 利用者様の獲得
それぞれ詳しく見ていきましょう。
ステップ1:事業計画書の作成
事業計画書には、どのような事業を行うのかを示した事業方針や、競合となる事業所に関する情報、収支の見通しなどを記していきます。
事業計画書は、主に指定申請や金融機関から資金を借り入れる際に使用される書類です。
計画の内容が非現実的な場合は、指定申請で開業を認められない可能性や金融機関から融資を受けられない可能性などがあります。
経営者としても、この事業計画を踏まえて事業を運営していくことになるので、できる限り綿密な計画を作成するようにしましょう。
ステップ2:法人設立
まず、会社の目的や役員、株主などを決めます。その上で、役員の同意書や定款などの登記に必要な書類を作成していきます。
書類の準備ができたら、書類を管轄の法務局へ提出し、法務局の審査を受けます。無事に審査を通過し、登記に必要な税金を納付できたら手続きは完了です。
税金については、例えば株式会社を設立する場合だと、印紙税や登録免許税などを合わせて20万円前後の費用が発生します。
また、登記手続きにおいては書類の不備がある度に、修正して書類を再提出する必要があります。
何度も法務局に行く時間を確保できない方は、行政書士などの専門家のサポートを受けるとよりスムーズに手続きを進めることができます。
ステップ3:開業のための資金の調達
相談支援の開業には、法人設立費、物件準備にかかる費用、内装施工費、人件費などで、一般的に『800万円』ほどの資金が必要になります。
一方で、そのすべてを自分の貯蓄だけでカバーできる人は少ないでしょう。
開業に必要な資金を自分の貯蓄だけで準備できない場合は、金融機関などから借り入れを受けるケースが多いです。
相談支援の主な資金調達方法は以下です。
- 金融機関などからの借り入れ
- 家族や知人などからの借り入れ
- 国や自治体の助成金・補助金
例えば、「1.金融機関などからの借り入れ」について、借り入れ先としては民間の金融機関と公的な金融機関の2種類が存在します。
特に創業時の借り入れにおいては、まだ会社としての信用が少ないこともあり、公的な金融機関である日本政策金融公庫に融資を依頼することが多いようです。
日本政策金融公庫の『新規開業・スタートアップ支援資金』を利用すれば、金利を抑えながら無担保・無保証人で借り入れを行うことができます。
借り入れの審査に時間がかかる場合もあるので、開業の3か月前には申し込みを済ませておけると安心です。
ステップ4:物件探し・契約
相談支援事業では、事務室や相談室など設備基準を満たすことができる物件を探す必要があります。
また、設備基準以外にも、現実的に支払い可能な賃料の条件や、サービスを利用する方々がアクセスしやすい立地の条件などを踏まえて物件を探していきます。
物件を探す方法として、インターネットや開業予定地域の不動産会社への相談なども行い、幅広く情報を集めましょう。
ステップ5:従業員の採用
相談支援事業として「指定」を受けるためには、人員基準を満たさなければなりません。
そのため、ステップ8にて解説する指定申請を行う前の段階で、求人を行い、従業員を採用しておく必要があります。
相談支援事業で必要な従業員数は、どれほどのサービス利用者数を見込んでいるかによっても変動するので、事業計画を踏まえて採用人数の目安を決めていきます。
採用方法としては、ハローワークや求人雑誌のほかに、インターネットの求人広告や人材紹介などが存在します。採用に使える費用も踏まえながら採用方法を決めるようにしましょう。
ステップ6:物件のリフォーム
相談支援事業の「設備基準」を満たすために、相談室の設置など、必要に応じて物件をリフォームする必要があります。
また、「設備基準」を満たすことができていても、サービスを利用する方にとってより居心地のよい環境になるように、壁紙の張替えなどのリフォームの実施も想定しておく必要があります。
ステップ7:備品の調達
相談支援事業所で働く従業員が使用するものとして、電話やFAX、オフィスデスクやオフィスチェア、パソコンやタブレットなどの通信機器といった備品が必要です。
また、サービスを利用する方々が使用するものとして、作業用具や机、いす、ティッシュやトイレットペーパーなどの消耗品の準備も必要です。
納品に時間がかかる場合もあるので、計画的に準備を進めていきましょう。
ステップ8:指定申請
相談支援事業を開業するためには、「指定申請」という手続きを行い、管轄の自治体より許認可を得る必要があります。
指定申請手続きでは、各自治体によって定められている必要書類を準備・提出します。
申請書類が受理されてから指定され、開業が可能になるまでの期間は指定権者によって違いはありますが、おおむね1~2か月程度を要します。
また、指定申請の前段階として「事前相談」が必要となるケースもあるので、開業を希望する月の『3か月前〜6か月前』までには一度、管轄の自治体の担当窓口へ相談するようにしましょう。
相談支援の指定申請に必要な書類の一覧
相談支援を開業する際に必要な書類の例をご紹介します。
【相談支援の指定申請書類の例】
- 指定協議事前調査シート
- 事業計画書
- 支援方法・組織体制の内容
- 収支予算書
- 運営規定
- 事業所一覧
- 社会福祉施設等における耐震化状況調査票
- 社会保険及び労働保険の加入状況にかかる確認票
- 法人登記簿謄本
- 誓約書
自治体によって必要な書類が異なる場合もあるので、詳しくは管轄の自治体の窓口やホームページで確認するようにしましょう。
ステップ9:業務支援システムの手配
相談支援では、サービス提供の対価を得るために、国保連とサービスを利用した方々へ請求する必要があります。
請求業務をスムーズに行うためにも、サービスを利用する方々への支援記録の管理ができる業務支援ソフトの導入を検討しましょう。
業務支援ソフトの機能としては、サービス提供記録の作成やサービス等利用計画の管理、利用者への交付書類の管理などが中心で、ほかにも様々な機能があります。
料金や機能の種類はソフトによって異なるため、複数のソフトを比較しながら導入するソフトを決めていきましょう。
ステップ10:サービス利用者の獲得
開業する日が決まったら、開業日に向けて、事業所紹介用のパンフレットや名刺、ホームページなどを作成し、サービスを利用する方々の獲得を目的にした集客を開始しましょう。
集客方法としては、病院や地域の保健所、保健センターなどの関係機関への営業活動やSNSを活用した情報発信、WEB広告などが考えられます。
予算も踏まえながら、可能な範囲で集客活動を実施していきましょう。
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相談支援事業の開業には、半年から1年ほどの準備期間が必要です。
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まとめ
ここまで、相談支援事業を開業するまでの流れや、立ち上げに必要な資格、相談支援の市場動向などについてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
相談支援事業を開業するためには、物件探しから資金調達、従業員の採用までやることがたくさんあり、時間もかかります。
まずは開業に向けてやらなければならないことをリストアップし、優先順位をつけた上でスケジュールを立てるところから始めてみるのがおすすめです。
かべなし開業支援では開業までのスケジュール作成のお手伝いも行っておりますので、ぜひお問い合わせください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
事業者への記録・請求ソフト導入支援経験者や、障害福祉・介護業界に長く携わるメンバーが在籍。障害福祉サービス事業所の開業、経営、日々の運営業務に役立つ情報を発信しています。
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