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就労継続支援A型とは、障がいのある方に対して「雇用契約を結んで働く機会を提供するサービス」です。
本記事では、就労継続支援A型事業の基礎知識をゼロからわかりやすく解説します。
ぜひ最後までお読みください。
就労継続支援A型とは?
就労継続支援A型事業の定義
就労継続支援A型とは、障害者総合支援法に基づいた障害福祉サービスです。
一般企業での就労が難しい障がいのある方々に対して、「雇用契約」を結んだ上で、働く機会と必要な支援を提供しています。
簡単に言えば、「支援を受けながら、労働者として働く場所」を提供するのがA型事業所の役割です。
利用者が地域社会で安定して働き続けられる環境を作り、将来的に一般就労へ移行できる可能性がある方に対してスキルや社会性の向上を目指した支援を行っています。
就労継続支援A型では「雇用契約」を結ぶ
就労継続支援A型は、「利用者と事業所が雇用契約を結ぶ」点が、B型や他のサービスと一線を画す最大のポイントです。
雇用契約により、利用者が労働者としての立場となり、最低賃金以上の賃金支払い義務が発生します。
そのため事業者は最低賃金を賄うための生産性を確保しつつ、それでいて利用者にとって無理のない支援を提供し続けることが求められます。
就労継続支援A型の利用対象者
18歳以上65歳未満の障がいのある方で下記を満たす方が対象です。
※平成30年4月から、65歳以上の者も要件を満たせば利用可能。 引用元:厚生労働省「障害者雇用率制度等の在り方について:就労継続支援A型事業所やその利用者の位置づけ」
- 移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった者
- 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった者
- 就労経験のある者で、現に雇用関係の状態にない者
- 通常の事業所に雇用されている障害者であって主務省令で定める事由により当該事業所での就労に必要な知識及び能力の向上のための支援を一時的に必要とする者(R4障害者総合支援法改正法により新設)
就労継続支援A型は、障がいのある方誰もが利用できるわけではありません。
「利用者」と「企業」間での雇用契約を前提とするため、利用者には
- 事業所との雇用契約を結ぶ意思
- 一定の支援を受けながらも働く能力があると認められる
ことが求められます。
他の就労支援サービスや一般障がい者雇用との比較
就労支援サービスの比較表
| 項目 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 | 就労移行支援 |
|---|---|---|---|
| 雇用契約の有無 | あり(雇用型) | なし(非雇用型) | なし(非雇用型) |
| 賃金・対価 | 賃金(最低賃金以上) | 工賃(平均で数千円〜数万円/月) \ ※最低賃金に依らない | 原則なし |
| サービスの目的 | ・雇用契約に基づく就労が可能な方への継続的な働く場や生産活動の場の提供 \ ・その他の支援の実施 | ・雇用契約に基づく就労が困難な方への継続的な働く場や生産活動の場の提供 \ ・その他の支援の実施 | ・一般就労に向けた求職活動に関する支援 \ ・適正に応じた職場の開拓 \ ・就職後の定着に向けた相談等の支援 |
| 利用期間 | 原則期限なし | 原則期限なし | 最長2年間の期限あり |
| 対象者層 | 雇用契約を結べる能力・意欲のある方 | 雇用契約が困難な方 | 2年以内に一般就労を目指す方 |
(出典:厚生労働省「障害者雇用率制度等の在り方について:就労継続支援A型事業所やその利用者の位置づけ」より作成)
就労継続支援A型とB型の違い
就労継続支援事業において、A型とB型では「雇用契約を結ぶ」点がもっとも重要な違いです。
- A型(雇用型):事業所と利用者が雇契約を結ぶ。利用者は労働者であり、事業所は最低賃金以上の賃金支払い義務を負う。
- B型(非雇用型): 雇用契約を結ばない。利用者は訓練生という位置づけであり、事業所は作業内容に応じて「工賃」を支払う。工賃は賃金ではないため、最低賃金法の適用外。そのため、A型に比べると対価は低い。
B型は「非雇用型」であり、軽作業を通じて訓練と工賃を得るのに対し、A型は「雇用型」のため、労働関連の法の適用を受けることも明確な違いです。
就労継続支援A型と就労移行支援の違い
A型と就労移行支援は、どちらも「一般就労」を最終的な目標に据えることが多い点は共通していますが、その役割が根本的に異なります。
- 就労移行支援: 一般企業で働くためのスキルや知識を習得するための準備期間や、求職に関する支援を提供するサービスです。期間は原則2年間と定められており、利用中に一般就労を目指します。
- A型: 現時点では一般就労が難しくても、継続的に雇用契約の下で働く場を提供することが主目的です。そのため、原則として期間の定めはありません。
就労移行支援は「一般就労への通過点」であり、A型は「支援付きの働く場」を提供するという違いがあります。
就労継続支援A型事業所と一般の障害者雇用との違い
就労継続支援A型事業所と、一般企業が行う「障害者雇用」(法定雇用率の対象となる雇用)も似ているようで、決定的な違いがあります。
| 項目 | 就労継続支援A型 | 一般の障害者雇用 |
|---|---|---|
| 目的 | 福祉サービスの一環として支援と雇用を提供する | 企業の戦力として雇用する |
| 専門職配置 | 義務あり(サービス管理責任者、指導員など) | 義務なし(特例子会社などを除く) |
| 法的枠組み | 障害者総合支援法 + 労働基準法 | 障害者雇用促進法 + 労働基準法 |
就労継続支援A型は、利用者の障害特性に応じた専門の支援員を配置することが義務付けられています。これにより、利用者は手厚いサポートを受けながら働くことが可能です。
事業所側は、この支援体制を提供するための人員基準を満たさなければなりません。
就労継続支援A型事業の需要や市場動向
就労継続支援A型を立ち上げようと考えている方の中には、就労継続支援A型の需要や市場の動向が気になっている方もいらっしゃるかもしれません。
就労継続支援A型の利用実人員数は、2014年から2023年にかけて増加傾向にあります。
また、就労継続支援A型の事業所数についても同様の傾向が見られます。
就労継続支援A型事業所の収益構造と立ち上げ要件
就労継続支援A型の収益構造
就労継続支援A型では、利用者にサービス提供を行った対価として得る「障害福祉サービスの報酬」が主な収入になります。
「障害福祉サービスの報酬」は、
- 基本報酬
- 加算・減算
に分類することができます。
基本報酬に対して加算や減算の項目を加減した金額を算出し、負担割合に応じてサービス利用者の方と国保連(国民健康保険団体連合会)に対して請求を行います。
「1.基本報酬」について、就労継続支援A型では厚生労働省が公表するスコア表に則って200点満点のスコアを算出します。
上記のスコア以外にも、職業指導員・生活指導員の配置数が「前年度の平均利用者数を7.5で割った数以上」もしくは「10で割った数以上」なのかによっても受け取れる単位数は変わります。
例えば、定員20人以下の事業所だと、評価点と職業指導員・生活指導員の配置数に応じた単位数は以下の表のようになります。
| 7.5:1の場合 | 10:1の場合 | |
|---|---|---|
| 評価点が170点以上の場合 | 724単位 | 660単位 |
| 評価点が150点以上170点未満の場合 | 692単位 | 630単位 |
| 評価点が130点以上150点未満の場合 | 676単位 | 616単位 |
| 評価点が105点以上130点未満の場合 | 655単位 | 597単位 |
| 評価点が80点以上105点未満の場合 | 527単位 | 480単位 |
| 評価点が60点以上80点未満の場合 | 413単位 | 376単位 |
| 評価点が60点未満の場合 | 319単位 | 290単位 |
このスコアごとにもらえる単位数に対し、各地域ごとに決まっている1単位当たりの単価を掛け合わせることで基本報酬の金額が決定します。
単位数が増えるほど事業所が受け取れる報酬も多くなるのです。
「2.加算・減算」について、一定の条件を満たすことで得られる報酬が「加算」、本来満たすべき人員基準や設備基準などを満たさない場合に適用されるのが「減算」です。
「加算」については、様々な種類が存在し、所定の資格を持った職員を配置することで得られる福祉専門職員配置等加算や、食事を提供した場合に加算される食事提供体制加算などがあります。
就労継続支援A型の加算・減算については下記の記事に一覧でまとめていますので、ぜひご一読ください。
また、最低賃金以上の支払いが義務であるため、人件費率が高くなる事業構造であることもポイントです。
A型事業所を開設するための要件
就労継続支援A型事業所を開設するためには、下記の要件を満たす必要があります。
- 法人格を有している
- 人員基準を満たす
- 設備基準を満たす
- 運営基準を満たす
就労継続支援A型は個人事業主では運営することができないため、株式会社、合同会社、一般社団法人、NPO法人といった法人格を取得する必要があります。
そのうえで、就労継続支援A型を開業・運営する上で必要な職種や配置人数などの人員基準、必要な設備や備品が定められた設備基準があります。
また、サービスの利用にあたっての留意事項や緊急時における対応方法などの運営規程(運営基準)を定めておく必要があります。
詳しい要件については、下記の記事をご覧ください。
就労継続支援A型の開業・立ち上げに必要な資格や開業までの流れとは?
就労継続支援A型事業所の仕事内容と具体事例
| 業態 | 具体的なビジネス事例 |
|---|---|
| ブランド菓子
製造・販売 |
「久遠チョコレート(QUON Chocolate)」
全国に展開するチョコレートブランド。トップショコラティエが監修し、従業員の半分以上が障がいのある方。百貨店でも販売される高いブランド力を持つ。 |
| IT・Webメディア | 「TANOSHIKA(タノシカ)」
Webメディア『AKARI』の運営や記事執筆、デザイン業務を行うIT分野での事例。その他にも、農業や総合職、政争の分野でも事業を行っている。 \ 同メディアで事業所の実態やノウハウも発信している。 |
| システム管理・クリエイティブ | 「株式会社ファムロード」
厚生労働省「就労継続支援A型事業所好事例集(2019)」にも掲載された好事例。システム・アプリ開発から新規事業開発、印刷物作成まで対応している。 |
| 多品種リンゴ栽培 | 「一般社団法人ドリームファーム」
多品種少量生産のリンゴを主な農産物とした農業、その加工品の販売を行う。10代から60代まで幅広い年齢の方に利用されている。 |
就労継続支援A型の開業をかべなし開業支援がお手伝いします!
就労継続支援A型の開業には、半年から1年ほどの準備期間が必要です。
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まとめ
本記事では、就労継続支援A型事業の仕組みから、B型や移行支援との違い、そして具体的な成功事例までを解説してきました。
これから参入を検討される方にとって最も重要なポイントは、A型事業は「福祉事業」であると同時に、シビアな「実業」であるということです。
- 福祉の側面: 利用者の障害特性を理解し、手厚いサポートで自立を支える。
- 経営の側面: 一般企業と同様に、市場価値のある商品・サービスを生み出し、最低賃金を支払えるだけの利益を上げる。
この2つを満たせたとき、就労継続支援A型事業所は利用者にとって「かけがえのない居場所」となり、経営者にとって「安定した収益と高い社会貢献(SDGs・CSR)」をもたらす事業となるでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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