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障害者グループホーム(共同生活援助)は、障害のある方の地域生活を支える場として社会的な意義が非常に大きいといえます。また、国からの給付金を基盤とするため、長期的に安定した運営を期待できるとして事業所の開設を検討する方が増えています。
しかし、中には開業から数年で運営が行き詰まってしまう事業所も少なくありません。その主な原因は、大きく「開業前の知識・準備不足」と「開業後の運営体制づくり」の2つに分かれます。
この記事では、障害者グループホーム(共同生活援助)における事業の基礎知識を押さえた上で、それぞれの経営・運営フェーズに潜む落とし穴と持続可能な運営を実現するための対策を解説します。
ぜひ最後までお読みください。
障害者グループホーム(共同生活援助)とは?
まずは、事業の前提となる障害者グループホーム(共同生活援助)の役割や種類について整理します。
障害者グループホーム(共同生活援助)の目的と役割
障害者グループホームの目的は、障害のある方が地域社会の中で自立し、安心した日常生活を送れるよう支援することです。
障害者グループホームの役割としては、食事の提供や入浴のサポート、健康管理、就労先や医療機関との連絡調整といった生活全般の支援です。入所施設等からの地域移行の受け皿として、また、同居する家族が高齢化した後の住まいとして欠かせない役割を担っています。
障害者グループホーム(共同生活援助)の種類
障害者グループホームは、障害のある方の障害支援区分や必要なサポートの内容により、主に以下の3つの形態に分かれます。
| 介護サービス包括型 | 日中サービス支援型 | 外部サービス利用型 | |
|---|---|---|---|
| 特徴と対象者 | 事業所のスタッフが直接、食事や入浴などの支援を行います。最も一般的な形態です。 | 夜間だけでなく日中もスタッフを配置し、支援します。高齢化や重度化により日中活動先へ通うことが難しい方が対象です。 | 基本的な家事援助は事業所が行い、身体的な介護は外部の居宅介護事業所へ委託します。 |
| 事業所数 | 11,857事業所 | 1,242事業所 | 1,148事業所 |
| 利用者数 | 167,004人 | 18,441人 | 14,105人 |
※事業所数および利用者数は以下参照
参照元:厚生労働省 令和6年度報酬改定後の主なサービスの動向について
また、上記3つの他に「サテライト型」というものもあります。サテライト型は、将来的に完全な1人暮らしに移行することを目的に、1人暮らしに近い形で本体グループホームの近くの民間のアパート等で生活をします。
サテライト型のグループホームを単独で設置することはできないため、親元となる本体グループホームとセットで運営する必要があります。
障害者グループホーム(共同生活援助)の種類について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
障害者グループホーム(共同生活援助)の需要と市場動向
障害のある方と同居する家族の高齢化に伴う地域移行のニーズや国からの給付金で安定した運営を見込めること、新規参入の障壁の低さなどを理由に、障害者グループホームは増加傾向にあります。国も大規模施設から地域社会への移行を推進しており、障害者グループホームの整備を後押ししています。
以下は、令和3年(2021年)から令和6年(2024年)における障害者グループホームの事業所数の推移ですが、上述した背景もあり、事業所数が増加していることがわかります。
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また、障害者グループホームの利用者数についても、事業所数と同様に増加傾向にあります。
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(出典:厚生労働省「令和6年度報酬改定後の主なサービスの動向について」より作成)
開業前の「準備・知識不足」が招く落とし穴と対策
障害者グループホームを開業する前の段階で、障害福祉特有のノウハウや制度、物件に関する理解などが不足していると、開業後の運営に大きな影響が出てしまいます。ここでは、開業前の準備不足が原因で陥りやすい落とし穴について5つ挙げて解説します。
| 開業前のチェック項目 | 陥りがちな落とし穴 | 講じるべき対策 |
|---|---|---|
| 経営ノウハウ・知識 | 制度や障害特性への理解不足により、現場が混乱したり行政指導を受けたりする。 | 行政や福祉団体の研修へ参加する。独学に頼らず、外部の専門家を適切に活用する。 |
| 収支計画の見通し | 給付費入金までの「2ヶ月のタイムラグ」を考慮せず、初期に資金ショートを起こす。 | 複数の入居シミュレーションを作成し、最低でも半年分の運転資金を確保して始める。 |
| 地域のニーズ調査 | 事前リサーチ不足で需要のないエリアに開設してしまい、空室が長引く。 | 自治体の計画データを確認し、地域の相談支援事業所などへ直接ヒアリングを行う。 |
| 人材確保の計画 | サビ管(サービス管理責任者)の採用が遅れ、指定申請ができずに開業が延期になる。 | 物件探しと並行し、指定申請の半年前から地域相場に合わせた処遇で採用を開始する。 |
| 物件の法令・要件 | 建築基準法や消防法を未確認のまま契約し、指定が下りない・高額な改修費がかかる。 | 物件の契約前に、図面を持って自治体の障害福祉課や消防署へ必ず事前相談に行く。 |
障害福祉の経営ノウハウ・専門知識の不足
他業界からの新規参入においては、一般的な企業経営の知識だけではない障害福祉分野ならではの専門的な経営ノウハウや専門知識に関する壁が存在します。
陥りがちな落とし穴
障害福祉業界で事業を展開・運営するにあたっては、障害者総合支援法などに基づく制度や各自治体が定めている事業所運営に関するルール、障害特性に合わせた正しい支援アプローチなど、把握しておくべき基礎知識が多数あります。
こうした業界特有のノウハウや知識が不足していると、開業したものの現場のオペレーションが混乱して職員が困惑したり、行政からも不適切な運営として指導を受けたりする事態につながりかねません。
対策
福祉業界での経験がない場合には、経営者自身が行政や福祉団体が主催する研修・勉強会などへ積極的に参加し、障害者総合支援法の基本構造や運営基準を正しく学ぶ機会を設けることが大切です。独学や表面的な情報だけに頼らず、障害特性に応じた適切な環境構成や声かけの基本などを深く理解しましょう。
また、自社だけで対応しようとせず、福祉分野に精通した有識者や行政書士、あるいは開業コンサルタントといった外部のサポートを適切に活用することも有効です。最初から正しい運営ノウハウに基づいた組織の土台を構築することで、開業後の現場の混乱などを未然に防ぐことにつながります。
収支計画の見通し不足
グループホームの運営を長期的に安定させるためには、障害福祉事業ならではの資金の流れを正確に把握しておく必要があります。
障害福祉事業の売上の大部分を占める給付費は、当月分の支援実績を翌月上旬に国保連(国民健康保険団体連合会)へ請求し、その翌月に入金される仕組みとなっています。そのため、サービスを提供してから実際の報酬が手元に入るまでには必ず約2ヶ月のタイムラグが発生します。また、利用者から徴収する家賃や食費などの自己負担金も翌月回収が一般的であるため、開業初期は収入がない状態で人件費や家賃といった固定費を先行して支払わなければなりません。
陥りがちな落とし穴
障害福祉事業の給付金が国保連(国民健康保険団体連合会)から入金されるまでの期間を計算に入れていなかったり、人員基準を満たすための人件費や消防改修費などの固定費を楽観的に見積もってしまったりすることが挙げられます。これにより、開業後数ヶ月で資金繰りが厳しくなり、職員への給与支払いや家賃の支払いに追われて運営が行き詰まってしまうケースがあります。
対策
開業前に、入居ペースが緩やかな場合を想定した、複数のシミュレーションによる収支計画を作成することが重要です。自治体ごとの正確な地域区分単価や利用者の障害支援区分に応じた給付金の見込み額、水道光熱費や人件費といった固定費をシミュレーションに漏れなく反映させます。
その上で、半年分程度の運転資金を自己資金や融資によって確保した状態で運営をスタートさせましょう。資金にゆとりを持つことが、結果としてサービスの質の維持にもつながります。
地域のニーズや事前リサーチ不足
開業する地域が求めている支援とマッチしていなければ、利用者を迎えることは難しくなります。
陥りがちな落とし穴
開業予定地域における利用者のニーズや地域のグループホームの状況、利用者の通所先、物件周辺の公共交通機関・商業施設など、地域のニーズやマーケットのリサーチ不足が挙げられます。ニーズにマッチしていないエリアで開業してしまうと、開業したものの入居希望者が増えずに数ヶ月にわたって空室が続き、固定費や人件費の負担だけが大きくなります。
対策
開業を予定している自治体の障害福祉計画などの公的データを確認するほか、地域の基幹相談支援センターや相談支援事業所へ直接足を運び、ヒアリングなどを行いましょう。
その上で、地域で不足している・ニーズの高い支援形態に基づいて開業を検討したり、物件の周辺環境が利用者の生活に適しているかを慎重に吟味したりしながら、事前のリサーチを徹底することが大切です。立地環境まで含めてニーズに合致させることで、開業後のスムーズな入居促進へとつながります。
人材確保の見通し不足
グループホームを開業するためには、行政の指定基準を満たす人材が必要です。
陥りがちな落とし穴
「開業が決まってから求人を出せば集まるだろう」と考えて採用が間に合わないケースです。特に事業所の要となるサービス管理責任者(サビ管)の深刻な人材不足を認識できておらず、物件の準備はできたのに職員が揃わず行政への指定申請ができない・受理されない事態に陥る恐れがあります。その結果、開業が数ヶ月単位で後ろ倒しになり、その間の家賃だけが発生し続けるリスクが挙げられます。
対策
物件探しや収支計画の策定と並行し、指定申請の締め切りから逆算して、少なくとも半年前など早い段階から計画的に採用活動をスタートさせましょう。特に確保が難しいサービス管理責任者(サビ管)については、周辺地域の求人相場を調査し、適切な処遇や勤務条件を設定する必要があります。
また、ハローワークだけでなく福祉専門の求人媒体の活用、自社の理念や支援の方向性などの想いを丁寧に求人原稿に反映させることで、理念に共感してくれる質の高い人材の確保につながります。
物件選定における法令・要件の確認不足
物件探しは開業準備の中でも時間を要することの一つです。グループホームとして運営するには、定められた基準を満たしている必要があります。
陥りがちな落とし穴
福祉施設における建築基準法や消防法のルール、自治体ごとの独自の条例を事前に確認していないことによる指定申請の遅れなどを招くケースです。理想的な物件を見つけて契約を結んだにもかかわらず、基準を満たしていないことが原因で自治体から開業の許可(指定)が下りない、あるいは想定外の設備改修で数十万〜数百万などの追加費用が発生してしまうことがあります。
対策
物件の契約を締結する前に、必ず建物の平面図や検査済証などの書類を持参し、自治体の障害福祉課および管轄の消防署への事前相談を必ず行いましょう。その物件がグループホームとして使用可能な構造か、どのような消防設備の設置義務が生じるかを確認し、必要に応じた改修工事を行う必要があります。
また、受け入れ予定の利用者の障害区分や特性を考慮し、段差の解消や通路幅の拡大、スロープ設置といったバリアフリーの観点も忘れないようにしましょう。
開業後の「運営体制づくり」で直面する落とし穴と対策
無事に指定(開業)を受けられた後も、日々の運営現場で適切な体制を維持できていないと、継続することが難しくなります。ここからは開業後の運営体制づくりのフェーズで直面する落とし穴と対策をみていきましょう。
| 開業後のチェック項目 | 陥りがちな落とし穴 | 講じるべき対策 |
|---|---|---|
| 人材の定着・離職防止 | 方針が不透明で場当たり的な対応が続くと、職員が不信感を抱いて離職してしまう。 | 支援方針やマニュアルを明確化する。サビ管の業務を分業化し、定期面談で現場の声を拾う。 |
| 法令遵守と記録の体制 | 多忙を理由に計画更新や記録作成を怠ると、運営指導で給付金返還や指定取り消しになる。 | 最新の法改正情報を常にキャッチアップし、「記録=サービスの質」という意識を組織で共有する。 |
| 適切な加算の取得 | 複雑な要件による申請漏れで、本来得られる報酬を逃して赤字経営に陥る。 | 事業所の体制(人員・設備)で取得可能な加算を整理・確認し、漏れのない申請と体制整備を行う。 |
| 利用者獲得(周知活動) | 関係機関への訪問や情報発信を怠ると、入居者が集まらず空室が長引く。 | 相談支援事業所や特別支援学校等へ定期的に周知を行い、丁寧な見学・アセスメント体制を整える。 |
人材定着(離職防止)のための対策ができていない
無事に職員を採用して開業した後も、適正な運営や働きやすい職場環境の整備などを怠ると職員の離職を招きます。
陥りがちな落とし穴
日々の業務に関するフォロー体制や事業所として適切な運営マネジメントができていないことが原因で、職員の離職を招いてしまうケースです。例えば、経営者や管理者が明確な支援方針や現場の共通ルールを設けておらず、トラブルが起きても場当たり的な対応を繰り返し、その結果として職員が不信感を抱いて離職につながることなどが考えられます。
対策
職員が迷わず、安心して一貫した支援を提供できる運営体制の確立が不可欠です。まずは事業所としての支援方針や倫理観、利用者の対応マニュアルなどを明確に定め、全職員で共有する仕組みを作りましょう。
また、サービス管理責任者(サビ管)が個別支援計画の作成や現場の指導といった本来の専門業務に専念できるよう、事務作業のシステム化や分業化を進め、特定の個人に業務や責任が集中するのを防ぐことも大切です。経営者や管理者が定期的に職員と面談を行い、現場の声を拾い上げて労働環境や運営ルールの改善を継続的に行うことが、定着率向上に直結します。
複雑な法令の理解と遵守体制が整っていない
開業後は、法令に則った適切な運営体制を維持することが求められます。利用者一人ひとりに合わせた適切なサービスを提供し、支援の質を高い水準で担保するために、正しく法令を理解することが不可欠です。
陥りがちな落とし穴
定期的に実施される法改正や複雑な運営基準の意図を深く理解せず、日々の現場対応の忙しさなどから個別支援計画書の定期的な更新や日々の支援記録の作成を怠ってしまうケースです。
適切な書類の作成を怠ったり書類の不備を放置したりするということは、利用者の変化やニーズに応じた適切なサービスが提供できていない状態を意味します。計画が形骸化して支援の軸がブレると、結果として利用者の生活の安定が損なわれてしまいます。
さらに、定期的に行われる運営指導の際には、体制不備により指摘を受けることもあるでしょう。その結果、過去に遡って給付金返還を命じられたり、最悪の場合には指定取り消しとなる可能性もあり得ます。
対策
法令遵守をすることは、利用者に提供するサービスの質を保証することに直結するという共通認識を事業所全体でもつことが大切です。
障害福祉の制度は定期的に見直されるため、国や自治体からの最新情報を常にキャッチアップし、組織の知識をアップデートし続ける体制を整えなくてはなりません。法改正の動向や行政から出される留意事項通知などを定期的に確認する時間を作るなどして、変更点などはミーティング等を通じての共有・周知を徹底することが不可欠です。
正しく加算の取得ができていない
グループホームの運営において、健全な収支バランスを維持するためには加算の仕組みを正しく理解して取得することが重要です。
陥りがちな落とし穴
加算の算定要件は複雑かつ定期的な報酬改定で要件が変わるため、申請漏れなどが起きるケースがあります。加算を取得できないと本来得られるはずの運営資金が確保できず、赤字経営になりかねません。その結果、職員の処遇改善や設備の充実なども進まなくなるため、サービスの質低下を招く恐れがあります。
対策
まずは事業所の現在の運営体制(人員構成や夜間支援の有無、利用者の区分など)において、取得可能な加算を整理しましょう。それぞれの加算には細かい算定要件があるため、要件の確認が必要です。適切な申請と体制整備を欠かさないことが、職員の給与アップや利用者へのサービス還元につながり、結果として安定した事業所運営の強固な基盤となります。
利用者獲得のための活動ができていない
グループホームの満室を保つには、地域の関係機関とどのような信頼関係を築いていけるかも重要なポイントの一つです。
陥りがちな落とし穴
利用者の獲得は、営業活動のほか、地域の相談支援専門員や相談支援事業所との信頼関係の構築が重要となります。しかし、そのための情報発信や相談支援事業所への訪問などを怠った結果、満室にならず空室が長引いて運営をひっ迫するといったケースがあります。
対策
開業後も地域の相談支援事業所や特別支援学校、地域の福祉窓口へ向けた定期的な周知活動を行いましょう。
また、相談支援専門員から安心して利用者を紹介してもらえるよう、まずは気軽に見学を受け入れる体制などを整えておきます。利用者一人ひとりのアセスメントを丁寧に行い、自事業所の体制で安全に質の高い支援が提供できるかどうか、双方にミスマッチがないかを判断するために、丁寧なステップを踏むことが地域の福祉関係者からの信頼獲得につながります。
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まとめ
グループホームの経営で失敗しないためには、事前の綿密なリサーチ、ゆとりを持った資金・収支計画、早期の人材採用、そして職員が働きやすい環境づくりなどが大切です。これら一つひとつの丁寧な準備が質の高い支援を生み、結果として継続的に安定した運営へとつながっていきます。
かべなし開業支援では、専属のアドバイザーが開業に向けてサポートします。グループホームの開業に関する不安やお悩みをお持ちの方は、ぜひ一度かべなし開業支援までお問い合わせください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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事業者への記録・請求ソフト導入支援経験者や、障害福祉・介護業界に長く携わるメンバーが在籍。障害福祉サービス事業所の開業、経営、日々の運営業務に役立つ情報を発信しています。





