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グループホーム(共同生活援助)の開業にあたっては、設備基準に則って、利用者の障害支援区分や建物の延床面積などに応じてスプリンクラーの設置が義務となる場合があります。
グループホームを開業するには、物件の選定・契約や必要書類の作成など、様々な準備が必要となりますが、スプリンクラーを含む消防設備を整備することも開業許可(指定)を受けるために必須となります。
この記事では、グループホーム(共同生活援助)におけるスプリンクラーの設置基準や活用できる補助金、消防設備の整備に関して開業時に必要な手続きなどを解説します。
ぜひ最後までお読みください。
グループホーム(共同生活援助)のスプリンクラー設置義務とは?
グループホーム(共同生活援助)におけるスプリンクラーの設置基準はどのように定められているのでしょうか。設置義務となる条件などを解説します。
消防法におけるスプリンクラーの設置基準
消防法では、福祉施設を大きく「6項ロ」と「6項ハ」に分類しており、これに基づきスプリンクラー設置基準が定められています。
| 消防法上の区分 | 利用者の要件(目安) | スプリンクラー設置基準 |
|---|---|---|
| 6項ロ | 障害支援区分4以上の方が概ね8割を超える場合 | 延床面積に関わらず原則必須 |
| 6項ハ | 上記(6項ロ)に該当しない場合 | 延床面積6,000㎡以上で必須 |
障害支援区分4以上の重度の方を積極的に受け入れる(利用者のおおむね8割以上)「6項ロ」のグループホームの場合、一般的な戸建て住宅を改修した小規模な物件であっても、原則としてスプリンクラーの設置が義務付けられます。
「6項ロ」に該当しない場合は「6項ハ」となります。6項ハの事業所では「延床面積6,000㎡以上」の場合において設置義務が発生します。
スプリンクラーの設置が免除・緩和される条件
上述の通り、「6項ロ」に該当するグループホームの場合は原則スプリンクラーの設置が義務化されていますが、6項ロでも以下にあたる場合は設置が免除されるケースがあります。免除ルートは大きく分けて以下の2パターンが存在します。
①小規模施設(延床面積100㎡未満)に対する特例
主に既存の戸建て住宅を改修して運営する場合に適用される特例です(消防法施行規則第12条の2)。この特例を受けるためには、以下の【絶対条件】を満たした上で、建物の構造が【パターンA】または【パターンB】のいずれかに該当する必要があります。
【絶対条件(大前提として必須)】
- 建物の延床面積が「100㎡未満」であること。
- 居室が「避難階(原則として1階)」にのみ存在すること。
【パターンA】直接屋外へ避難できる構造
すべての居室のドアや窓から、廊下を通らず「直接」屋外へ逃げ出せる造りであること。
【パターンB】一般的な間取りの構造(以下の1〜4をすべて満たすこと)
直接外へ出られない一般的な戸建ての場合、以下の要件を満たす必要があります。
- 各居室が壁等で区画されている。
- 各居室・通路に「連動型」の煙感知器がある。
- 各居室に、内外から容易に開けられる窓や扉がある。
- 「2方向以上の避難経路がある」または「火災の影響が及ぶ前に屋外へ避難できると同等の安全性が認められる」こと。
②延焼抑制構造(燃え広がりにくい構造)を持つ建物の特例
延床面積が100㎡以上であっても、建物自体が火災に強い構造であれば特例が認められるケースがあります。鉄筋コンクリート造のマンションや、耐火基準を満たした新築物件などで該当する可能性があります。
【主な要件の目安】
- 壁、柱、床、天井などが耐火構造(または準耐火構造)で作られていること。
- 壁や天井の仕上げ(内装)に不燃材料が使われていること。
- 火災の広がりを抑えるための「防火区画」が法令の基準通りに適切に設けられていること。
運営途中で「設置義務が発生」するケース
開業時には、スプリンクラー設置義務のない「6項ハ」に該当していたグループホームが、運営途中で「6項ロ」になり事後的に設置義務が発生するケースがあります。
たとえば、開業当初は障害の程度が軽度・中等度の利用者が中心の「6項ハ」としてスタートし、スプリンクラー未設置で運営していたとします。しかし、長年の運営の中で利用者が加齢により重度化したり重度の方を受け入れたりした結果、「障害支援区分4以上の方が8割以上」となるケースがあり得ます。
このような場合、6項ロに該当した時点でスプリンクラーの設置義務が発生します。スプリンクラーの設置には数百万円の費用がかかるため、将来の受け入れビジョンを見据えておくことも重要です。
グループホーム(共同生活援助)でスプリンクラー以外にも必須の消防設備
グループホームにおいては、スプリンクラー以外にも設置が必要な消防設備があります。
自動火災報知設備(自火報)
火災の熱や煙を感知し、建物内にベルや音声で知らせる設備です。「6項ロ」の場合は面積問わず必須となります。
一般的な有線式の自火報は壁や天井への大掛かりな配線工事が必要ですが、延床面積300㎡未満の小規模なグループホームであれば、配線工事が不要な「特定小規模施設用自動火災報知設備(無線式)」の導入が認められることが多く、初期費用を大幅に抑えられます。
火災通報装置
ボタンを押すだけで消防署(119番)へ自動的に通報し、録音された音声で施設の住所等を伝える装置です。
こちらも「6項ロ」の場合は面積に関わらず必須です。設置には固定電話回線との接続が必要になるため、事前の回線手配を忘れないようにしましょう。
消火器・誘導灯・避難器具
消火器
「6項ロ」の場合は面積に関わらず設置が必須です。消防法の規格品を適切な歩行距離(20m以下)に配置します。
「6項ハ」のグループホームでも、延床面積が150㎡以上の場合は設置義務があります。
誘導灯
避難口を示す緑色の照明です。「6項ロ」「6項ハ」どちらのグループホームでも原則必須です。
避難器具
「6項ロ」か「6項ハ」かに関わらず、以下の場合は避難はしごやすべり台の設置が義務付けられています。
- 2階の場合:その階にいる人数(収容人員)が20人以上
- 3階以上(または地下)の場合:その階にいる人数(収容人員)が10人以上
スプリンクラーの設置費用と利用できる補助金とは?
スプリンクラーの設置には数百万程度の費用がかかりますが、設置には国や自治体の補助金制度もあるためまずはご自身の開業予定地域の自治体ホームページなどで確認してみましょう。
スプリンクラーの設置費用の目安
設置費用は物件の広さや構造によって変動しますが、延床面積が150㎡程度の戸建て物件に設置する場合、おおよそ250万〜300万円が目安となります。ただし、配管を隠すための天井の解体・復旧工事(クロス張り替えなど)などが伴うと費用が膨らみやすいため、必ず複数の業者から相見積もりを取ることが重要です。
補助金の例
スプリンクラーの設置には、以下のような補助金制度を活用できる可能性があります。
- 社会福祉施設等施設整備費補助金(既存の小規模社会福祉施設等のスプリンクラー等整備補助事業など)
- 障害者グループホーム開設等事業費補助金(※名称や枠組みは自治体によって異なります。)
- 重度障害者等対応施設改修整備事業補助金
これらの他にも、自治体によって独自の補助金制度を整えているケースがあるため、確認してみるとよいでしょう。
スプリンクラー等整備補助金については、こちらの記事で詳しく解説しています。
補助金申請に伴う注意点
必ず「着工前(契約前)」に申請すること
補助金は自治体からの「交付決定」を受けてから工事の契約・着工に進みましょう。すでに工事が始まっていたり事後報告になったりした場合は、支給対象外となるため注意が必要です。
自治体の予算スケジュールに合わせること
多くの補助金は公募期間が限られています。場合によっては前年度からの事前協議が必須となるため、スケジュールには半年以上の余裕を持つことが理想です。
設置して終わりではない「消防設備点検」の実施義務
スプリンクラーや自動火災報知設備などの消防設備は、設置して終わりではありません。万が一の火災時に確実に作動し、入居者とスタッフの命を守れるよう、消防法に基づいた定期的な点検と報告が義務付けられています。
機器点検
6か月に1回の実施が必要です。消防設備士などの有資格者により、設備の外観に異常がないか、簡易な操作で正常に作動するかを確認します。
総合点検
1年に1回の実施が必要です。設備の一部を実際に作動させたり、使用したりすることで、総合的な機能が正常に働くかを詳細に確認します。
点検・報告を怠った場合のペナルティ
設備の不備や法令違反が疑われる場合、まずは消防署による予告なしの立ち入り検査が行われます。検査によって不備が発覚すると改善を促す勧告(行政指導)が行われますが、これに従わず放置し続けた場合、法的拘束力を持つ命令(設備の改修や建物の使用停止など)が下されます。
さらに、点検が未実施の場合だけでなく、消防署への報告を怠ったり虚偽の報告をしたりした場合は、消防法違反として30万円以下の罰金または拘留が科される可能性があります。
なお、消防設備の点検・報告義務違反は、消防署だけでなく自治体からも厳しく追及されます。運営指導では、消防設備点検結果報告書(受付印のあるもの)の提示が求められ、未実施が発覚した場合は運営基準違反として指導を受けます。悪質な場合は指定取り消しなど重い処分となる可能性もあるため、注意が必要です。
グループホーム(共同生活援助)開業時に必要となる消防手続きとは?
消防署からの許可が下りなければ、指定(開業許可)を受けることはできません。物件を契約する前に管轄の消防署での確認が必要となります。手続きが遅れると開業予定日の遅れにもつながってしまうため、全体像とスケジュール感を把握しておきましょう。
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ステップ① 管轄消防署での事前相談
【スケジュール目安】物件契約前
物件の賃貸契約や売買契約を結ぶ前に、建物の平面図を持って管轄の消防署へ行きましょう。ここで各種消防設備の設置義務を確認します。
設備の設置等にかかる総額と工事にかかる期間が見えてから物件契約を進めましょう。
ステップ② 防火対象物使用開始届出書の提出と消防検査
【スケジュール目安】設備工事の完了直後(自治体への指定申請の2週間〜1ヶ月前)
スプリンクラーや自動火災報知設備などの設備工事が完了する目処が立ったら、消防署へ「防火対象物使用開始届出書」を提出します。
(※消防法上は「建物を使い始める7日前まで」の提出とされていますが、自治体への指定申請スケジュールを考慮すると前倒しで進める必要があります。)
書類提出後、消防署による消防検査(立ち入り検査)で、図面通りに設備が配置されているか、火災報知器などが正常に作動するかが確認されます。万が一不備を指摘された場合、再工事の期間も必要になるため、スケジュールには余裕を持たせておきましょう。
ステップ③ 消防法令適合通知書の取得
【スケジュール目安】消防検査の数日〜1週間後(自治体への指定申請の締め切り前)
消防検査を無事にクリアすると、消防署から「消防法令適合通知書」が発行されます。
この書類を取得していないと指定申請を進められないため、開業予定時期から逆算してスケジュールを立てるようにしましょう。
ステップ④ 防火管理者選任届・消防計画の提出
【スケジュール目安】消防検査のタイミング等に合わせて(事業開始前まで)
事業所の規模や区分によっては、管轄の消防署へ「防火管理者選任(解任)届出書」と「消防計画作成(変更)届出書」の提出が義務付けられています。提出が必要となる基準は以下の通りです。
- 「6項ロ」のグループホームの場合: 収容人員(入居者+スタッフの合計)が 10人以上
- 「6項ハ」のグループホームの場合: 収容人員(入居者+スタッフの合計)が 30人以上
該当する事業所では、有資格者を事業所の「防火管理者」として選任し、火災予防や避難に関するルールを定めた「消防計画」を作成して届け出なければなりません。これらは自治体への指定申請時やその後の運営指導でも確認されるため、忘れずに手続きを行いましょう。
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まとめ
グループホームでは、利用者の障害支援区分や建物の広さによって、スプリンクラーの設置義務が定められています。スプリンクラーをはじめとした消防設備を適切に設置することは、事業所全体の安全確保のために非常に重要です。
また、グループホームの開業準備を進めるにあたっては管轄の消防署への確認・相談が必須です。開業には消防関連の確認・手続きに加え、多岐にわたる書類の準備が必要となるため、スケジュールには余裕をもって進めるようにしましょう。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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事業者への記録・請求ソフト導入支援経験者や、障害福祉・介護業界に長く携わるメンバーが在籍。障害福祉サービス事業所の開業、経営、日々の運営業務に役立つ情報を発信しています。





