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高次脳機能障害の就労支援とは?事業所の体制づくりと運営のポイント

公開日: 更新日:
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高次脳機能障害の就労支援とは?事業所の体制づくりと運営のポイント

高次脳機能障害のある方の就労支援は、特性への理解や支援体制の整備がまだ十分に広まっていない領域です。一方で、適切な体制を整えることで、事業所全体の支援の質を高めることにもつながります。

この記事では、高次脳機能障害のある方の受け入れを検討している事業所が整えるべき運営体制や高次脳機能障害の就労支援における現場課題と対処法などを解説します。

高次脳機能障害とは?

高次脳機能障害とは、脳卒中や交通事故、脳炎などによる脳へのダメージが原因で、記憶・注意・思考・行動などの認知機能に障がいが生じた状態を指します。厚生労働省の「高次脳機能障害者支援法」関連資料によれば、高次脳機能障害のある方の数は全国で約23万人と推計されており、決して少なくない方が就労支援を必要としています。

就労支援の現場で特に影響が大きい症状としては、以下の4つが挙げられます。

  • 記憶障害:新しいことを覚えにくい、直前のことを忘れてしまう
  • 注意障害:集中力が続かない、複数のことを同時に処理できない
  • 遂行機能障害:物事を順序立てて計画・実行することが難しい
  • 社会的行動障害:感情のコントロールが難しい、場の空気を読むことが苦手

特に高次脳機能障害は「見えない障がい」とも呼ばれ、外見からは障がいがあることが分かりにくいため、職員や企業担当者が障害特性を理解しないまま関わってしまい、トラブルに発展するケースが少なくありません。また、利用者本人も自身の状態を把握しにくい場合があることから、事業所側には特性への深い理解と丁寧なアセスメントが求められます。

精神障害や発達障害と症状が似ている部分もありますが、支援の方向性は異なります。「なんとなく難しそう」という印象で受け入れを躊躇するのではなく、特性を正確に理解することが支援の質を高めることにつながります。

高次脳機能障害の就労支援に取り組む意義

高次脳機能障害のある方の就労ニーズは高まっている一方で、専門的な支援体制を整えた事業所はまだ多くありません。こうした背景を受け、令和6年(2024年)4月の障害福祉サービス等報酬改定では、「高次脳機能障害者支援体制加算」が新設されました。高次脳機能障害のある利用者が一定割合を占め、専門研修を修了した職員を配置している事業所を評価する制度であり、国が事業所の体制整備を後押しする動きが明確になっています。

さらに、令和7年(2025年)12月には「高次脳機能障害者支援法」が成立し、令和8年4月から施行されました。社会全体で支援の枠組みが整備される中、就労系サービス事業所の役割はますます重要になっています。

こうした状況の中で、高次脳機能障害の就労支援に取り組むことは、支援を必要としている方により確かな形で応えられる事業所へとつながります。医療機関やリハビリテーション機関、高次脳機能障害支援拠点機関や高次脳機能障害者支援センターとの連携ルートが生まれやすく、地域の中で果たせる役割も拡大します。また、高次脳機能障害への対応力を高めることは職員全体の支援スキルの向上にもつながり、事業所の支援品質の底上げにもなります。

高次脳機能障害のある方の受け入れ時に整えるべき運営体制

ここでは、高次脳機能障害のある方の受け入れ前に、確認・準備すべき3つのポイントを解説します。

①職員体制・スキルの確認

受け入れにあたってまず確認すべきは、高次脳機能障害の特性を理解している職員が複数名いるかどうかです。特定の1名だけが対応できる状態では、担当者の負担が増大し、離職リスクにもつながりかねません。

複数の職員が特性を理解した体制を整えるうえで、外部研修や都道府県の支援拠点機関が提供するコンサルテーションの活用が有効です。「高次脳機能障害者支援体制加算」の算定要件にもこの研修の修了者の配置が含まれており、加算取得を視野に入れながら事業所全体のスキルアップを図ることが求められます。

②関係機関との連携ルートの構築

高次脳機能障害の支援は、事業所単独で完結させようとするのではなく、医療機関との情報共有、高次脳機能障害支援拠点機関・高次脳機能障害者支援センターの活用、相談支援専門員や障害者就業・生活支援センターとの連携体制を事前に構築しておくことが望ましいといえます。

困ったときに連携先を探すのではなく、受け入れ前から関係性を作っておくことで、いざというときにスムーズに連携できる体制が整えやすくなります。

③受け入れ時のルール・支援フローの整備

アセスメントから個別支援計画の作成、日々の支援、定着フォローまでの一連の流れを明文化しておくことが重要です。特に、症状の波や疲労への対応方法、緊急時・症状悪化時の対応フローは、あらかじめルールとして整備しておくことで、現場の混乱を防ぐことができます。

高次脳機能障害の就労支援における現場課題と対処法

ここでは、支援の過程において現場で起こりやすい課題とその対処法を整理します。

起こりがちな現場課題

高次脳機能障害の就労支援では、以下のような課題が現場で起こりやすい傾向にあります。

  • 職員が対応に疲弊・困惑し、モチベーションが低下する
  • 利用者本人の自己認識と実際の能力とのギャップによるトラブルが生じる
  • 企業・雇用主への障害特性の説明がうまくいかず、定着につながらない
  • 家族との連携が不十分なまま支援が進んでしまう

事業所として取るべき対応

まず取り組みたいのが、職員が孤立しない仕組みの構築です。定期的なケース共有の場を設け、担当職員が一人で抱え込まない体制をつくることが重要です。

あわせて重要なのが、支援の標準化です。特定の職員のスキルや経験に依存しないよう、支援マニュアルや記録体制を整備し、チームで対応できる状態が望ましいといえます。

また、企業・家族との連携はサービス管理責任者や管理者が主導する体制が望ましいといえます。障害特性の説明や合理的配慮の提案をこうした責任者層が担うことで、現場職員の負担を軽減しつつ、より信頼性の高い対応につながりやすくなります。

利用者の定着に向けた体制構築

高次脳機能障害のある方が、環境の変化による脳疲労やストレスを乗り越え、長く安定して働き続ける(あるいは事業所に通い続ける)ためには、事業所側の伴走体制が重要になってきます。ここでは、現場の負担を抑えつつ、利用者の定着に向けた体制構築のポイントを解説します。

モニタリング体制の最適化:期間に応じた「状態チェック」のルール化

担当スタッフの気づきや業務の空き時間に依存したフォローを脱却し、事業所として標準化したモニタリング体制を構築することが重要です。

また、就職あるいは事業所の利用開始からの期間に応じた面談頻度をルール化することも大切です。面談時には、高次脳機能障害のある方の状態変化を把握するうえで重要なポイントである脳疲労の蓄積、環境や人間関係の変化、作業のエラー傾向を網羅した定型チェックシートを運用し、客観的なデータとして状態を継続的に把握します。

多職種との分担(役割の明確化による負担軽減)

外部の専門機関や関係者と役割を分担し、自事業所で全てを抱え込まない体制をつくることが重要です。

一般就労を目指す場合は、作業マニュアルの作成や企業側へのレクチャーなど現場に密着した環境調整は外部のジョブコーチに依頼し、事業所では本人のメンタルケアや生活基盤の維持に特化するといったことも有効です。

就労継続支援A型・B型での通所安定を目指す場合は、日中の作業支援や特性のアセスメントは事業所側が担い、生活面や金銭管理の課題は相談支援専門員や家族、医学的なフォローは主治医や訪問看護へと役割を明確に分担するとよいでしょう。

外部関係先(企業・家族・関係機関)との定期的な情報共有

関係先に対し「何か問題があったら連絡してください」と丸投げすることは、相手側の心理的負担を高め、問題の発見が遅れる原因になりかねません。先回りの定期連絡の仕組みを構築しておくことが有効です。

具体的には、月に1回など、利用者本人の振り返りと受け入れ側の評価を1枚に集約した状況報告シートをフォーマット化して運用する方法が考えられます。作業手順の調整回数や遅刻・早退・欠席の回数、作業上のエラーの傾向など、定量的な数字で状態を可視化することで、関係者全員が同じ目線で状況を確認しやすくなります。

二次障害・症状悪化時の迅速な対応フロー

高次脳機能障害は、脳疲労の蓄積や環境の変化から、うつ症状や感情の不安定さといった二次障害が突発的に現れるリスクがあります。そのような場合に備えて現場が迷わず対応できるよう、悪化時の手順をあらかじめ定めておくことが重要です。

たとえば、メモの取り忘れが増えるなど悪化のサインを事前に言語化し、連携先と共有しておくことで、早期に気づける体制をつくります。サインを検知した際の対応手順(業務量の調整、管理者による医療機関への相談、必要に応じたステップダウンなど)もあらかじめ決めておくことで、現場が落ち着いて動けるようになります。

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まとめ

高次脳機能障害のある方の就労支援における難しさの多くは、準備不足から生まれます。職員体制の整備、関係機関との連携構築、支援フローの標準化という3つの柱を整えることが、事業所運営における重要な取り組みのひとつとなります。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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この記事の執筆者
かべなしメディア編集部 株式会社エス・エム・エス

事業者への記録・請求ソフト導入支援経験者や、障害福祉・介護業界に長く携わるメンバーが在籍。障害福祉サービス事業所の開業、経営、日々の運営業務に役立つ情報を発信しています。

※掲載内容はすべて記事公開時点のものです。

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