令和9(2027)年度の障害福祉サービス等報酬改定に向けて、第67回障害福祉報酬改定検討チーム(令和8年10月30日)では、グループホーム(共同生活援助)や自立訓練など、障がいのある方の地域での暮らしを支えるサービスが議題になりました。
厚生労働省の資料は、自立訓練、自立生活援助などの地域生活系サービス、グループホーム、強度行動障害の状態にある方への支援の4つの章に分かれており、論点は合わせて15あります。
本記事では、15の論点を一覧で確認したうえで、グループホームから順にサービスごとの検討案を見ていきます。
ここで紹介する内容は、検討チームで議論されている段階の案です。報酬や基準として決まったものではありません。記事の内容は、令和8年10月30日時点の資料をもとにしています。
元資料は第67回障害福祉報酬改定検討チームの資料「自立訓練、自立生活援助、地域移行支援、地域定着支援、地域生活支援拠点等、共同生活援助、強度行動障害の状態にある者等への支援に係る報酬・基準について≪論点等≫」です。
また、その他の令和9年度報酬改定については以下の記事にまとめております。こちらもあわせてご覧ください。
今回の議論の主なポイントは?
- 今回は、自立訓練、地域生活系のサービス(自立生活援助・地域移行支援・地域定着支援・地域生活支援拠点等)、グループホーム(共同生活援助)、強度行動障害の状態にある方への支援の4分野について、合わせて15の論点が出されています。
- グループホームで重度の方がヘルパーを個人単位で利用できる特例は、令和8年度末で期限を迎える予定ですが、この特例を令和9年度以降も続ける案が示されました。
- 大規模住居等減算は、減算の度合いを見直す案に加えて、日中サービス支援型の定員8〜19人の住居も対象に含める案が出ています。
- グループホームの質の確保に向けて、チェックシートによる自己評価と、地域連携推進会議による外部評価、その結果の公表を指定基準で求める案が挙げられています。地域連携推進会議は、おおむね年2回以上の開催とする案です。
- 医療的ケアが必要な方を受け入れやすくするため、グループホームの看護職員配置加算に、より手厚い配置を評価する区分を設ける案があります。加算の要件のうち「常時の連絡体制」を、外部の看護職員との連携でも満たせるようにする案もあります。
- 強度行動障害の状態にある方への重度障害者支援加算は、支援開始から180日を過ぎても段階的に評価を続ける案が出ています。グループホームでは、区分3以下でも行動関連項目が10点以上なら対象とする案も例示されました。
- 自立訓練では、高次脳機能障害者支援体制加算の評価を3段階に分ける案や、機能訓練の看護職員をサービス提供時間帯の配置で認める案が検討されています。
- 地域生活系では、自立生活援助のサービス管理責任者の特例の対象を広げる案、地域移行支援の対象に女性自立支援施設の入所者を加える案、2人目以降や、月100回の支援を確保しにくい地域では、拠点コーディネーターを非常勤でも配置できるようにする案が出ています。
- いずれも検討段階の案で、単位数や減算率などの具体的な数字はまだ示されていません。12月の基本的な考え方の整理、令和9年2月の改定案のとりまとめに向けて、内容が具体化していく見込みです。
第67回検討チームで示された論点の全体像
資料の章立てと、各章で示された論点の数は次のとおりです。
| 章 | 設定されている論点 | 資料p. |
|---|---|---|
| 1. 自立訓練 | 論点1~4 | 2~47 |
| 2. 自立生活援助、地域移行支援、地域定着支援、地域生活支援拠点等 | 論点1~4 | 48~82 |
| 3. グループホーム | 論点1~4 | 83~139 |
| 4. 強度行動障害の状態にある者等への支援 | 論点1~3 | 140~158 |
| 5. 医療的ケア(再掲) | ー | 159~160 |
※第67回資料p.1の目次をもとに作成しています。5の医療的ケアは、生活介護、短期入所、グループホームの医療的ケアに関する検討案をまとめて再掲したものです。グループホームに関する部分は、3章の論点2と同じ内容のため、本記事では3章の中で紹介します。
論点一覧
| 章 | 論点 | テーマ | 主な対象サービス | 検討案の要旨 |
|---|---|---|---|---|
| 自立訓練 | 論点1 | 高次脳機能障害のある方への支援の評価 | 自立訓練、生活介護、施設入所支援、就労系サービス、グループホーム | 加算の評価を3段階に分け、専門機関から助言を受ける取り組みも評価する |
| 自立訓練 | 論点2 | 医療から福祉へのリハビリテーションの引き継ぎ | 自立訓練(機能訓練) | 退院前カンファレンスへの参加や退院時の共同指導を評価する |
| 自立訓練 | 論点3 | 居住サポート住宅との連携 | 自立訓練(生活訓練)、地域移行支援、グループホーム | 居住サポート住宅への移行支援を評価し、関連する2つの加算の対象を広げる |
| 自立訓練 | 論点4 | 看護職員の配置 | 自立訓練(機能訓練) | サービス提供時間帯に配置していれば基準を満たすものとする |
| 地域生活系 | 論点1 | サービス管理責任者の特例 | 自立生活援助 | 特例を活用できる相談支援専門員を、計画相談支援・障害児相談支援の事業所にも広げる |
| 地域生活系 | 論点2 | 日常生活支援情報提供加算 | 自立生活援助、地域定着支援 | 精神科以外の病院・診療所への情報提供も対象にする |
| 地域生活系 | 論点3 | 地域移行支援の対象者 | 地域移行支援 | 女性自立支援施設の入所者も対象に加える |
| 地域生活系 | 論点4 | 拠点コーディネーターの配置 | 地域生活支援拠点等 | 一定の場合に非常勤での配置を認める |
| グループホーム | 論点1 | 個人単位の居宅介護等の特例 | グループホーム | 令和9年度以降も特例を続け、今後の扱いを検討する |
| グループホーム | 論点2 | 看護の体制 | グループホーム | 手厚い看護配置の区分を設け、外部の看護職員との連携も認める |
| グループホーム | 論点3 | 大規模住居等減算 | グループホーム | 減算の度合いを見直し、日中サービス支援型の8~19人の住居も対象にする |
| グループホーム | 論点4 | 支援の質の確保 | グループホーム | 自己評価・外部評価・結果の公表を指定基準で求める |
| 強度行動障害 | 論点1 | 広域的支援人材による支援の評価 | 自立訓練、生活介護、就労系サービス、グループホーム、障害児支援など | 集中的支援加算の水準を見直し、訪問と遠隔で単価を分ける |
| 強度行動障害 | 論点2 | 重度障害者支援加算 | 施設入所支援、グループホーム | 180日を過ぎても段階的に評価し、グループホームでは区分3以下の方も対象にする |
| 強度行動障害 | 論点3 | 集中的支援の促進 | 短期入所、施設入所支援、グループホーム | 集中的支援の評価を手厚くし、施設が運営する短期入所の活用を進める |
※第67回資料p.2・48・83・140の各章の論点をもとに、検討案の要旨は編集部でまとめています。
次の章からは、グループホームを先頭に、サービスごとの検討案を詳しく見ていきます。複数のサービスにまたがる論点は、関わりの深い章で取り上げます。
グループホーム(共同生活援助)の検討案
グループホームについては、ヘルパー利用の特例、看護の体制、大規模住居等減算、支援の質の確保という4つの論点が出されました。いずれも、事業所の運営や報酬に直接関わる内容です。
個人単位の居宅介護等の利用の特例を令和9年度以降も延長する案(論点1)
グループホームの入居者のうち重度の障がいのある方は、特例として、居宅介護や重度訪問介護のヘルパーを個人単位で利用できます。この扱いは令和9年3月31日までの期限つきの措置となっています。
現行の特例の主な内容は次のとおりです。
- 利用できるのは、障害支援区分4以上で、行動援護や重度訪問介護の対象となる方などです。
- 特例を利用する入居者については、グループホームの基本報酬が通常より低く設定されています。たとえば介護サービス包括型の共同生活援助サービス費(Ⅰ)の場合、区分6の方の基本報酬は600単位ですが、特例を利用する場合は369単位になります。
この特例を利用する方は、入居者の重度化・高齢化を背景に増えており、令和5年4月の3,056人から、令和8年4月には3,332人になりました。
一方で、グループホームとヘルパー事業所のどちらが支援に責任を持つのかがあいまいになりやすいことや、事故が起きたときの対応、公費の二重払いにつながるおそれといった課題も指摘されています。
こうした課題はあるものの、論点1で示されたのは、この特例を令和9年度以降も続ける案です。重度の障がいのある方を受け入れる体制を保つための、当面の対応という位置づけです。
関係団体からは、特例を恒久的な仕組みにしてほしいという声も複数寄せられています。そこで、責任の分担や事故時の対応、支給決定の進め方などについて、実際に試す取り組みも行いながら検討を続ける考えが示されています。
看護職員配置加算に、より手厚い配置を評価する区分を設ける案(論点2)
グループホームでの看護や医療的ケアは、現行では、看護職員配置加算、医療的ケア対応支援加算、医療連携体制加算の3つで評価されています。ただし、看護職員配置加算と医療的ケア対応支援加算の取得率は、低い水準にとどまっています。
| 加算 | 介護サービス包括型 | 外部サービス利用型 | 日中サービス支援型 |
|---|---|---|---|
| 看護職員配置加算 | 6.6% | 6.0% | 18.2% |
| 医療的ケア対応支援加算 | 0.5% | 0.2% | 3.3% |
※第67回資料p.106をもとに作成しています(令和8年4月サービス提供分の算定率)。
資料では、グループホームへの入居を希望しない理由として、4割以上の方が、必要な医療的ケアを十分に受けられるかどうかへの不安を挙げた調査結果も紹介されています。
論点2では、医療的ケアが必要な方の受け入れを広げ、すでに積極的に受け入れている事業所が評価されるよう、次の2つの案が示されました。
- 看護職員配置加算に、上位の区分を設ける案です。現行の加算は常勤換算で1人以上の配置を評価するものですが、それを上回る人数を配置し、休日も含めて看護体制を確保している事業所を高く評価する形です。対象は、日中サービス支援型と、医療的ケアが必要な方を一定数以上支援してきた介護サービス包括型が想定されています。
- 加算の要件である「常時の連絡体制」を見直す案も出ています。現行の要件では自事業所の看護職員による体制が前提ですが、外部の病院や診療所、訪問看護ステーションの看護職員と連携して対応できる場合も認めることが検討されています。認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)の仕組みが参考にされています。
大規模住居等減算を見直す案(論点3)
グループホームは、障がいのある方が地域の住宅で少人数で暮らし、家庭に近い環境で生活するための住まいです。1つの住居の定員は原則10人以下で、1住居あたりの入居者は平均6人程度です。
定員の多い住居が増えすぎないよう、現行では次のような場合に大規模住居等減算が適用されます。
- 定員8人以上の住居(日中サービス支援型は21人以上)
- 近くの住居を一体的に運営しており、定員の合計が21人以上になる場合
しかし、定員8人以上の住居は2015年度の2,066住居から2024年度の6,655住居へと、10年で約3.2倍に増えました。資料では、減算による抑制の効果は十分ではないと評価されています。
さらに、令和7年の経営概況調査をもとにした集計では、減算を適用されている事業所のほうが、適用されていない事業所より収支差率が高いという結果が出ています。
| 事業所の規模 | 減算なし | 減算あり |
|---|---|---|
| 全体 | +4.9% | +8.6% |
| 20人以下 | +4.6% | +5.8% |
| 21人以上 | +2.3% | +10.3% |
※第67回資料p.115・116をもとに作成しています。
こうした状況から、論点3では次の2つの案が示されました。
- 減算率そのものを見直す案です。8人以上の住居を複数運営している事業所や、定員21人以上の住居、近くの住居を一体的に運営して合計21人以上になる住居は、効率的な運営が見込まれることから、見直しの対象として挙げられています。
- 日中サービス支援型の場合、現行では定員21人以上の住居のみが減算の対象です。これを広げて、定員8人以上20人未満の住居も対象に含める案も示されました。
新しい減算率はまだ示されていません。現在行われている令和8年度の経営実態調査などの結果も見ながら、検討が進められる予定です。
自己評価と外部評価、結果の公表を指定基準に位置づける案(論点4)
グループホームには、障害福祉の運営経験が浅い事業者の新規参入が続いており、支援の質をどう保つかが課題になっています。
令和7年度末には「共同生活援助における運営や支援に関するガイドライン」がまとめられ、事業所が運営状況を自ら点検するためのチェックシートも示されました。一方で、指定基準でサービスの質の継続的な評価・改善が求められているものの、その進め方や実施状況を確かめる仕組みはまだ整っていません。そのため、取り組みの度合いは事業所によって大きく異なると見られています。
こうした状況を受けて、論点4では、認知症対応型共同生活介護の評価の仕組みを参考にしながら、チェックシートを使った評価の流れを指定基準に盛り込む案が出ています。流れは次の3段階です。
- 事業所がチェックシートで自らのサービスを点検する(自己評価)
- その結果をもとに、地域連携推進会議が第三者の視点で評価する(外部評価)
- 2つの評価結果を公表する
このほか、次のような案も示されています。
- 外部評価の客観性を確保するため、地域連携推進会議には市町村や基幹相談支援センターの職員、中立的な立場の有識者などが加わる形が想定されています。
- 公表の方法としては、利用者や家族への説明のほか、障害福祉サービス等情報公表システムや法人のホームページへの掲載、事業所内での掲示などが挙げられています。
- 事業所の負担に配慮し、チェックシートのうち必ず確認する項目は、全体の3分の1程度に絞ることも検討されています。
- 地域連携推進会議の開催は、現行の「おおむね年1回以上」から「おおむね年2回以上」に増やす案が示されています。
- 日中サービス支援型には、協議会などによる評価を受ける義務がありますが、新しい評価の仕組みが整うことを前提に、この義務をなくす案も出ています。この見直しは、事業所と協議会の双方の負担を減らすことをねらいとしています。
なお、管理者に求める資格などについては、サービス全体に共通するテーマとして、今後あらためて論点が示される予定です。
グループホーム(共同生活援助)が対象に含まれるその他の論点
グループホームに関係する論点は、この章のほかにもあります。
- 重度障害者支援加算の見直しなど、強度行動障害の状態にある方への支援については、次の章で紹介します。
- 高次脳機能障害者支援体制加算の見直しや、居住サポート住宅への移行支援の評価に関する論点は、自立訓練の章で紹介します。
強度行動障害の状態にある方などへの支援の検討案
強度行動障害は、自分を傷つける、他人をたたく、物を壊すといった行動がひんぱんに起こるため、特に配慮した支援を必要としている状態のことです。障害支援区分の認定調査で確認する「行動関連項目」の合計が10点以上かつ区分4以上の方が、重度障害者支援加算の対象です。
この章で示された3つの論点のうち、論点2と論点3は、グループホームも主な対象です。ここでは、前の章で取り上げたグループホームとつながりの深い論点2から紹介します。
【グループホーム(共同生活援助)・施設入所支援】重度障害者支援加算を180日を超えた後も段階的に評価する案(論点2)
重度障害者支援加算は、支援を始めてから180日までの期間に加算を上乗せするなど、支援開始直後の時期を重視した仕組みです。180日を過ぎると、報酬額は3分の2程度まで下がります。
資料の例では、グループホームで区分6・行動関連項目10点以上の方を支援している場合、180日を過ぎると500単位の上乗せ分がなくなります。その結果、基本報酬と加算を合わせた額は、1,460単位から960単位に下がります。
しかし、強度行動障害の状態にある方の生活リズムが整い、落ち着いて暮らせるようになるまでには、長い時間がかかる場合があります。調査研究の報告書では、外部の専門家が定期的に助言を行った場合でも、事業所が独自に標準的な支援を計画・実施できるようになるまでには、2年程度を要するという意見が紹介されています。
論点2で示されたのは、180日を過ぎた後も一定の評価を続け、支援の経過に応じて段階的に報酬を設定する案です。支援開始初期を手厚く評価する考え方は維持する前提です。資料では、支援中期、後期、安定期のように段階を分けて評価するイメージが描かれていますが、各段階の単位数はまだ示されていません。
【グループホーム(共同生活援助)】障害支援区分3以下でも行動関連項目10点以上の方を対象とする案(論点2)
強度行動障害の状態にある方の中には、障害支援区分は比較的低くても、手厚い支援を必要とする方がいます。グループホームの入居者のうち、区分3以下で行動関連項目が10点以上の方は952人いるとされています(令和7年7月時点)。
論点2では、区分だけでは行動面での支援の必要性が反映されにくい場合があるとして、評価の方法を見直す方向が示されました。例として挙げられているのが、グループホームで、区分3以下でも行動関連項目が10点以上あれば重度障害者支援加算を算定できるようにする案です。
集中的支援加算の単価を、訪問と遠隔で分けて見直す案(論点1)
集中的支援加算は、強度行動障害の状態が悪化した方に対して、広域的支援人材が専門的な支援を行った場合の加算です。支援を受けた事業所は、この加算をもとに、広域的支援人材を派遣した側へ謝金を支払います。
現行では、現地を訪れて行う支援も、テレビ電話などを用いた遠隔の支援も、同じ単価で評価されています。高い専門性を持つ人材を派遣する対価としては報酬が低いという意見もあります。広域的支援人材の配置は令和7年度で88人にとどまり、加算の算定実績も限られています。
これらの課題に対して、論点1では2つの見直しが挙げられています。1つは、専門人材による支援に見合うよう、報酬の水準そのものを見直すことです。もう1つは、移動の手間や費用がかかる訪問支援と、それが少ない遠隔支援とで単価を分けることです。現場の環境を実際に見ながら支援できる訪問を後押しするねらいがあります。
この論点は、自立訓練、生活介護、短期入所、施設入所支援、就労系サービス、グループホーム、児童発達支援、放課後等デイサービス、障害児入所施設と、幅広いサービスが対象です。
集中的支援の評価の充実と、短期入所の活用を促す案(論点3)
状態が悪化した方をほかの事業所から一時的に受け入れ、広域的支援人材を中心に集中的に支援する事業所は、集中的支援加算(Ⅱ)で評価されます。なお、この加算の対象として都道府県が選んでいる施設は、全国で5施設にとどまっています。
対象となる施設が少ない理由としては、都道府県から選ばれるための要件が厳しいことや、運営の負担が大きいこと、専門人材の確保や受け入れ体制づくりにかかる費用が報酬に十分反映されていないことが挙げられています。
論点3では、地域全体で支える体制づくりに向けて、集中的支援の評価を手厚くする案が出ています。あわせて、障害者支援施設がもつ専門性を生かせるよう、施設が運営する短期入所で期間を区切って集中的に支援する形を広げる方向も示されました。
自立訓練の検討案
自立訓練については4つの論点が示されました。このうち論点1と論点3は、自立訓練だけでなく、グループホームなどほかのサービスも対象に含まれています。
高次脳機能障害者支援体制加算を3段階の評価にする案(論点1)
令和8年4月に高次脳機能障害者支援法が施行され、どの地域に住んでいても、高次脳機能障害のある方が途切れなく支援を受けられる体制づくりが進められています。
一方で、現行の高次脳機能障害者支援体制加算は、利用者のうち高次脳機能障害のある方が定員の3割以上いることなどを算定の条件としています。実際の利用状況に照らすとこの基準は高く、算定率は機能訓練で15.2%、生活訓練で2.3%にとどまっています。
論点1では、次の2つの案が示されました。
- 評価を1段階から3段階に増やす案です。現行より条件を緩和した区分を設けて算定できる事業所を広げる一方、高次脳機能障害のある方を多く受け入れて専門的な支援をしている事業所には、より高い区分を用意する形です。
- 受け入れ人数が少ない事業所を対象とした評価も検討されています。高次脳機能障害者支援センターなどの専門機関から、アセスメントや個別支援計画の作成について助言を受ける取り組みが、新たな評価の対象として想定されています。
この論点の対象は、自立訓練(機能訓練・生活訓練)のほか、生活介護、施設入所支援、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、就労選択支援、グループホームです。
【機能訓練】退院前カンファレンスへの参加と退院時共同指導を評価する案(論点2)
脳卒中や交通事故などで、体のまひや高次脳機能障害が残った方は、病院でのリハビリテーションを終えたあと、障害福祉サービスに移ってリハビリを続けることがあります。しかし、移行の際に病院と事業所の情報共有が十分でなく、本人に合ったサービスにつながりにくいという指摘があります。
介護保険では、令和6年度の介護報酬改定で、退院前カンファレンスへの参加や退院時の共同指導を評価する仕組みが設けられました。令和8年度の診療報酬改定でも、医療と福祉の連携を後押しする評価が新設されています。一方、機能訓練などの障害福祉サービスには、同様の評価の仕組みがありません。
そこで論点2では、機能訓練の事業所でも、こうした評価を設ける案が出ています。事業所の理学療法士や作業療法士などが、退院前に病院で開かれるカンファレンスに参加し、退院時の共同指導を行った場合を評価することが検討されています。
【生活訓練・グループホーム(共同生活援助)・地域移行支援】居住サポート住宅への移行支援を評価する案(論点3)
居住サポート住宅は、令和7年10月に施行された改正住宅セーフティネット法で創設された住まいの仕組みです。見守りや相談に応じる体制が制度として用意されているため、これまで一般の賃貸住宅への入居が難しかった障がいのある方などにとって、新しい選択肢になると期待されています。
資料では、一人暮らしを希望し、そのための生活能力もある一方で、緊急時に頼れる人がいないことへの不安からグループホームを選ばざるを得ない方がいる、という指摘も紹介されています。
居住サポート住宅への移行を後押しするため、論点3では次のような案が示されました。
- 宿泊型自立訓練やグループホームなどの職員が、居住支援法人と協力して居住サポート住宅への入居を調整したり、引っ越しに向けた支援を行ったりした場合を評価する案です。
- 入居が実現し、その後の生活が安定している場合には、その結果も評価することが検討されています。
- 居住支援連携体制加算(35単位/月)と地域居住支援体制強化推進加算(500単位/回、月1回まで)について、宿泊型自立訓練と、移行支援住居があるグループホームも算定できるようにする案も出ています。
【機能訓練】看護職員の配置要件を緩和する案(論点4)
機能訓練の事業所には、常勤の看護職員を1人以上置くことが求められています。生活介護や生活訓練、介護保険の通所リハビリテーションと比べても、看護職員の配置は手厚くなっています。
一方で、機能訓練の事業所の約7割はサービス提供時間が8時間未満、4割弱は7時間未満です。請求している事業所も、令和8年4月時点で195か所にとどまっています。
論点4では、常勤1人以上という要件を改め、サービスを提供している時間帯に看護職員を配置していれば基準を満たすものとする案が示されました。看護職員という限られた人材を有効に生かすねらいもあります。
資料では、この見直しによって、看護職員がサービス提供時間以外にほかの職務にも従事できるようになるイメージが示されています。訓練の前後など、専門的な業務が必要な時間帯に限って配置すればよいとする、さらなる緩和については今後検討するとされています。
自立生活援助・地域移行支援・地域定着支援・地域生活支援拠点等の検討案
施設や病院から地域へ移る方や地域で一人暮らしを続ける方を支えるサービスについても、4つの論点が出されています。
【自立生活援助】サービス管理責任者とみなせる相談支援専門員の範囲を広げる案(論点1)
自立生活援助は、地域生活支援拠点等を支えるサービスの一つです。一方で、令和8年4月時点で請求している事業所は280か所にとどまり、1事業所あたりの利用者も平均約4.3人と少ないため、自立生活援助単独での事業運営は難しい状況にあるとされています。
令和6年度の報酬改定では、併設する一般相談支援事業所の相談支援専門員が、自立生活援助のサービス管理責任者を兼務できる特例が設けられました。しかし、一般相談支援の事業所自体が多くなく(請求事業所数は地域移行支援で381か所、地域定着支援で556か所)、特例の効果は限られていると資料では説明されています。
論点1では、この特例を活用できる相談支援専門員を、併設する計画相談支援(特定相談支援)や障害児相談支援の事業所の相談支援専門員にまで広げる案が出ています。請求事業所数は、計画相談支援が11,264か所、障害児相談支援が7,654か所と、一般相談支援より大幅に多くなっています。
【自立生活援助・地域定着支援】日常生活支援情報提供加算の情報提供先を広げる案(論点2)
日常生活支援情報提供加算は、服薬管理が不十分だったり、生活リズムが乱れていたりする利用者について、心身の状態などを精神科病院などに情報提供した場合に算定できる加算です(100単位/月、月1回まで)。
資料では、こうした情報の共有は精神障害のある方だけでなく、身体障害や知的障害、難病のある方などにも役立つとされています。障がいのある方の高齢化が進み、生活習慣病や慢性疾患の健康管理、服薬管理への支援が必要な場面も増えています。
論点2では、精神科に限らず、一般の病院や診療所に情報を提供した場合も加算の対象とする案が示されました。
【地域移行支援】女性自立支援施設の入所者を対象に加える案(論点3)
現行の制度で地域移行支援を利用できるのは、障害者支援施設や精神科病院、救護施設、刑事施設、更生保護施設などに入所・入院している障がいのある方です。
一方、女性自立支援施設にも、障がいのある方が一定数入所しています。令和6年度の入所者656人のうち、精神障害者保健福祉手帳などを保持している方は197人で、全体の30.0%でした。
論点3では、入所者が地域での生活を希望した場合に住まい探しなどの支援を受けられるよう、女性自立支援施設の入所者も地域移行支援の対象にする案が出ています。
【地域生活支援拠点等】拠点コーディネーターの非常勤配置を認める案(論点4)
地域生活支援拠点等で、関係機関との調整などを担う拠点コーディネーターを常勤で1人以上置くと、地域生活支援拠点等機能強化加算(500単位/月)を算定できます。算定できるのは、コーディネーター1人につき月100回までです。
この加算の単位数は、上限の100回まで算定した場合に、常勤職員1人分の人件費に見合うよう設定されています。しかし、地方では支援が必要な方が広い範囲に点在しており、毎月の回数を安定して確保するのが難しいという声があります。人口1万人未満の市町村では、4割が地域生活支援拠点等をまだ設けていません。
地方でも拠点コーディネーターを配置しやすくするため、論点4では常勤での配置という要件を緩和する案が示されました。具体的には、2人目以降のコーディネーターや、地域の事情で毎月100回の支援を確保しにくい場合に、非常勤でも配置できるようにする案です。
この論点の対象は、自立生活援助、計画相談支援、障害児相談支援、地域移行支援、地域定着支援です。
令和9年度障害福祉サービス等報酬改定の今後のスケジュールと検討の流れ
今後のスケジュール(予定)
改定までの大まかな日程は、令和8年6月5日の社会保障審議会障害者部会に報告された資料で示されています(令和9年度障害福祉サービス等報酬改定について(報告))。
| 時期 | 予定されている内容 |
|---|---|
| 令和8年9月~10月 | サービスごとの報酬などのあり方を検討 |
| 令和8年11月 | サービス全体に共通する報酬などのあり方を検討 |
| 令和8年12月 | 報酬・基準の基本的な考え方を整理・とりまとめ |
| 令和9年2月 | 報酬改定案をとりまとめ |
11月には、複数のサービスに共通するテーマの議論が予定されています。グループホームの管理者の資格要件なども、今回の資料では、こうした共通の論点の一つとして今後あらためて示されるとされています。
新しい報酬は令和9年度から適用される見込みです。施行日などの詳細は、今後公表される告示などで確認しましょう。
報酬改定検討チームでのこれまでの議論
| 開催 | 主な内容 |
|---|---|
| 第55回(令和8年4月28日) | 令和9年度報酬改定に向けた検討の進め方(資料) |
| 令和8年6月~8月 | 関係団体ヒアリング |
| 第62回(令和8年8月27日) | 令和9年度報酬改定に向けた主な論点(案)(資料) |
| 第63回(令和8年9月24日) | 訪問系サービス(資料) |
| 第64回(令和8年9月28日) | 就労系サービス(資料) |
| 第65回(令和8年10月5日) | 障害児支援(資料) |
| 第66回(令和8年10月22日) | 施設入所支援、生活介護、短期入所、療養介護(資料) |
| 第67回(令和8年10月30日) | 自立訓練、自立生活援助、地域移行支援、地域定着支援、地域生活支援拠点等、グループホーム、強度行動障害の状態にある方などへの支援(資料) |
令和8年度の臨時応急的な見直しとの関係
障害福祉の報酬改定は3年ごとに行うのが基本で、直近の改定は令和6年度でした。
これとは別に、令和8年度には、処遇改善加算の拡充や新規指定事業所の基本報酬引き下げなどを中心とした臨時応急的な見直しが行われています(厚生労働省 令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について)。令和9年度の改定は、この見直しも踏まえて行われる、本来の3年に1度の改定にあたります。
令和8年度の見直しの内容は、令和8年度障害福祉サービス等報酬改定(臨時応急的な見直し)の解説記事で紹介しています。
記録や請求の業務を効率化するなら『かべなしクラウド』
報酬改定の内容によっては、日々の支援記録や加算の算定状況の確認、請求にかかわる業務の見直しが必要になることがあります。
『かべなしクラウド』は、障害福祉サービス事業所向けの業務支援ソフトです。グループホームに対応しており、利用者情報の管理や支援記録・帳票の作成、個別支援計画の作成、国保連請求を行えます。
記録と請求をつなげて管理することで、職員の方が利用者と向き合う時間を確保しやすくなるでしょう。無料体験や資料ダウンロードもご用意していますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
まとめ
第67回の検討チームでは、障がいのある方が地域で暮らし続けるためのサービスを中心に、15の論点が議論されました。
グループホームについては、ヘルパー利用の特例の延長、大規模住居等減算の見直し、自己評価と外部評価の仕組みづくり、看護の体制の評価といった、運営に直接関わる案が並んでいます。強度行動障害の状態にある方への支援では、時間をかけた支援や、区分が比較的低い方への支援をどう評価するかが検討されています。自立訓練や地域生活系のサービスでも、配置要件を緩和する案や、地域への移行を後押しする案が出ています。
今回示された案は、いずれもまだ検討段階のものです。具体的な単位数や要件は、12月の基本的な考え方の整理や、令和9年2月の改定案のとりまとめで示される見込みです。自事業所に関係する論点を押さえておき、今後の資料が出たときに、何が変わるのかを確かめていきましょう。
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事業者への記録・請求ソフト導入支援経験者や、障害福祉・介護業界に長く携わるメンバーが在籍。障害福祉サービス事業所の開業、経営、日々の運営業務に役立つ情報を発信しています。





