令和9年度の障害福祉サービス等報酬改定に向けて、令和8年9月28日に第64回障害福祉報酬改定検討チームが開かれ、就労系サービスの報酬と基準について話し合われました。
公開されている厚生労働省の資料では、就労系サービス全般が対象の9つの論点と、就労系サービスの種別ごとの論点が設定されています。
この記事では、まず論点の全体像を紹介し、そのあと就労継続支援、就労移行支援、就労定着支援、就労選択支援の順に検討案を整理します。
なお、いずれも案は検討段階のものであり、報酬や基準として決まったものではありません。本記事は令和8年9月28日時点の資料にもとづく内容です。
元資料は第64回障害福祉報酬改定検討チームの資料「就労系サービスに係る報酬・基準について≪論点等≫」です。
また、令和9年度報酬改定全体の論点についてはこちらをご覧ください。
今回の議論の主なポイントは?
- 論点は就労系全般に横断する論点9つと、各サービス種別ごとの論点が設定されています。
- 横断的な論点のうち、就労継続支援と就労移行支援に共通するものとして、在宅支援の対象者要件の明確化や、施設外就労の実施ルールの整備が検討されています。
- B型の生産活動の収支を工賃の総額以上とする指定基準の新設、生産活動シートとスコア表の公表の義務化、ガイドラインの内容を指定基準などに位置づけることも、横断的な論点に含まれる案です。
- 一般就労への移行については、就労移行支援体制加算の計上方法の見直しや、就職後6か月間の支援を回数や内容に応じて評価する仕組みが示されました。
- サービス種別ごとの論点では、就労継続支援B型の基本報酬にスコア方式を導入する案が出ています。A型では、スコア方式の配点を支援の質を重視する方向へ見直す案が示されました。
- 就労定着支援では、再就職した方を定着者として数えられる期間を広げる案や、加算で事業所の倒産などを除外できるようにする案が挙がりました。
- 就労選択支援については、地域との連携の仕組みづくりや、本人の選択を狭める行為の禁止、特定事業所集中減算の見直しが検討されています。
- 今後は12月に報酬・基準の基本的な考え方が整理され、令和9年2月に改定案がとりまとめられる予定です。くわしい流れは後半のスケジュールの章で紹介します。
第64回検討チームで示された論点の全体像
今回の検討案では、就労系サービス全体に関わる横断的な論点が9つと、サービス種別ごとの論点が設定されています。
| 章 | 設定されている論点 | 資料p. |
|---|---|---|
| 1. 就労系サービスの横断的事項 | 論点1〜9 | 2〜56 |
| 2. 就労継続支援A型 | 論点1 | 57〜75 |
| 3. 就労継続支援B型 | 論点1 | 76〜97 |
| 4. 就労定着支援 | 論点1 | 98〜107 |
| 5. 就労選択支援 | 論点1〜3 | 108〜 |
※第64回資料p.1の目次をもとに作成しています。就労移行支援には独立した章がなく、横断的な論点のなかで検討案が示されました。
どの章にも、当日の議論などもふまえて論点をさらに追加する予定と書かれています。今後の検討チームで、新たな論点が加わる可能性もあります。
横断的な論点(論点1〜9)
この論点は、就労系サービスの複数のサービスにまたがる内容となっています。
| 論点 | テーマ | 主な対象サービス | 検討案の要旨 | 解説 |
|---|---|---|---|---|
| 論点1 | 一般就労への移行に関する評価 | 就労継続支援 | 就労移行支援体制加算を、就労定着者の割合に応じた評価にするなど計上方法を見直す | 就労継続支援 |
| 論点2 | 一般就労への移行・定着に向けた支援 | 就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援 | 一般就労後6か月の支援を回数や内容に応じて評価し、定着支援は段階的な報酬にする | 就労移行支援、就労定着支援 |
| 論点3 | 在宅支援 | 就労移行支援、就労継続支援 | 対象者の要件を明確にし、基本報酬や記録の保存の取り扱いを見直す | 就労継続支援 |
| 論点4 | 施設外就労 | 就労移行支援、就労継続支援 | 就労先を運営規程に明記し、範囲の設定や事業所内での評価を求める | 就労継続支援 |
| 論点5 | 支給決定の厳格化 | 就労移行支援、就労継続支援 | B型の新規利用申請時に、市町村がチェックリストで判断する | 就労継続支援 |
| 論点6 | ガイドラインの厳格化 | 就労系サービス | ガイドラインの内容の一部を施行規則や指定基準に位置づける | 指定・運営ルール |
| 論点7 | 会計区分 | 就労継続支援B型 | 生産活動の収支が工賃の総額以上となることを指定基準に位置づける | 就労継続支援 |
| 論点8 | 情報公表 | 就労選択支援、就労継続支援 | 生産活動シートやスコア表などの公表を義務づけ、第三者評価を努力義務にする | 就労継続支援、就労選択支援 |
| 論点9 | 就労選択支援の対象者 | 就労選択支援、就労移行支援、就労継続支援 | 予定どおり令和9年4月以降、A型の新規利用などにも対象を広げる | 就労継続支援、就労移行支援 |
※第64回資料p.2をもとに、検討案の要旨を編集部でまとめています。
サービス種別ごとの論点
横断的論点の後に、それぞれのサービスの章で設定されている論点です。
| サービス | 論点 | テーマ | 検討案の要旨 | 解説 |
|---|---|---|---|---|
| 就労継続支援A型 | 論点1 | スコア方式による評価項目の見直し | 支援の質に関する得点配分を高め、労働時間と生産活動の割合を下げる | 就労継続支援 |
| 就労継続支援B型 | 論点1 | スコア方式の導入 | 平均工賃月額に加え、支援時間や障害の程度なども含めて評価する。年間開所日数に269日の上限を設ける | 就労継続支援 |
| 就労定着支援 | 論点1 | 基本報酬や加算における就労定着者の考え方 | 再就職した方を定着者として数えられる期間を3か月以内に広げ、加算でも事業所の倒産などを除外できるようにする | 就労定着支援 |
| 就労選択支援 | 論点1 | 地域連携 | 協議会による評価や運営状況の報告を仕組みとして定め、コーディネーターの配置を目指す | 就労選択支援 |
| 就労選択支援 | 論点2 | 誘導行為等への対策 | 本人の選択肢を狭める行為を禁止し、特定事業所集中減算を見直す | 就労選択支援 |
| 就労選択支援 | 論点3 | 離島等における支援 | 就労選択支援を特別地域加算の対象とする | 就労選択支援 |
※第64回資料p.57・76・98・108の各章の論点をもとに、検討案の要旨を編集部でまとめています。
ここからは、横断的な論点とサービス種別ごとの論点をあわせて、サービスごとに検討案を整理していきます。
就労継続支援A型・B型の検討案
今回の資料では、両方に関わる論点が最も多く示されました。
【B型】基本報酬にスコア方式を導入する案
現在のB型の基本報酬には、平均工賃月額に応じて評価する体系と、利用者の就労や生産活動などへの参加をもって一律に評価する体系の2つがあります。
B型の論点1では、平均工賃月額だけによる評価ではなく、多様な観点から評価する仕組みにしてはどうかという方向性が示されています。
評価項目のイメージは次のとおりです。
| 区分 | 評価項目 | 評価の内容(資料のイメージ) |
|---|---|---|
| 主たる項目 | 平均工賃月額 | 利用者の平均工賃月額により評価 |
| 主たる項目 | 支援時間 | 1日の平均サービス提供時間により評価 |
| 主たる項目 | 障害の程度 | 利用者の障害の程度により評価 |
| 従たる項目 | 地域連携活動 | 地域と協働した生産活動や地域貢献活動の実績により評価。施設外就労もこの項目で評価 |
| 従たる項目 | 個別支援 | 利用者の個別の状況に応じた、利用者本位の支援を評価 |
| 従たる項目 | 支援体制 | 福祉分野の従事年数や有資格者の配置を評価 |
| 従たる項目 | 事業の透明性 | 第三者評価や自己評価の実施などを評価 |
| 従たる項目 | 指定基準の遵守 | 指定基準のなかで特に守るべき項目が未達成の場合に厳しく評価 |
※第64回資料をもとに作成しています。
平均工賃月額は「主たる項目」のひとつとして残る案です。そのうえで、支援の内容や体制、地域とのつながり、運営の透明性にも目を向けようとしている点が特徴です。
支援時間については、障害特性などによって平均サービス提供時間が短くなる場合の配慮を検討する、という注記も添えられています。
見直しの背景として、資料では主に次の点が挙げられました。
- 平均工賃月額だけの評価では、障害の程度が重い方への支援が適切に評価されていないという指摘があります。
- 令和6年度の予算執行調査で、利用時間が4時間未満の事業所の事業活動収支差率が高い状況が示され、利用者の平均利用時間をよりきめ細かく勘案する見直しを検討すべきと指摘されました。
※予算執行調査は財務省の調査であり、本記事では第64回資料のp.91に参考として掲載された範囲で紹介しています。
各項目の配点や合計点に応じた報酬区分、単位数はまだ示されていません。
【B型】平均工賃月額の算定で年間開所日数に269日の上限を設ける案
平均工賃月額の計算方法についても、年間開所日数を利用者の年間利用上限日数である269日までとする案が出ています。
令和6年度の報酬改定では、平均利用者数を用いた次の算定式が導入されました。
- 年間工賃支払総額 ÷(年間延べ利用者数 ÷ 年間開所日数)÷ 12月
この式では、年間開所日数が269日を超えると、利用者が皆勤しても計算上の平均工賃月額が実際に支払われた額より高くなってしまうことがあります。
例えば、仮に年間300日開所している事業所で、利用者10名が毎月2万円の工賃を受け取り、全員が269日利用したとします。 年間延べ利用者数は2,690人となり、300日で割った平均利用者数は約8.97人です。
このとき平均工賃月額は約22,300円と計算され、実際の2万円を上回ってしまいます。
こうした状況を見直すために、日数を269日として計算する案があがっています。 開所日数を269日として計算すれば、平均工賃月額は実際と同じ2万円になります。
【B型】生産活動の収支と工賃の関係を指定基準に位置づける案
A型では、生産活動の収入から必要な経費を差し引いた額が、利用者に支払う賃金の総額以上となるよう指定基準で定められています。
一方、B型にはこの規定がありません。そこで横断的な論点7として、B型にも生産活動の収支が利用者に支払う工賃の総額以上となることを指定基準に位置づける案が示されました。
運営法人の資金や寄付などから利用者に金銭を支払った場合、その額を平均工賃月額から除く取り扱いも検討されています。
ただし、関連法人から作業を受注することが利用者の社会での役割につながる場合もあることから、関連企業との取引を一律に不適切とすべきではない、という留意点も記されました。
【B型】利用開始時の支給決定とチェックリスト
横断的な論点5では、本人の希望や状態に応じて適切なサービスにつながることが自立に役立つという考えから、B型の新規利用申請の際に、市町村がチェックリストで支給決定の適否を判断する案が出ています。
チェックリストの例には、本人の意向や利用目的の確認、対象者要件の確認、アセスメント結果の活用が挙げられました。あわせて、就労選択支援を経ずにB型を利用できる就労経験がある方について、その意味を企業などとの雇用契約にもとづく就労経験がある方と明示する案も示されています。
【A型】スコア方式の評価項目を見直す案
A型では、令和3年度の報酬改定以降、スコアによって基本報酬を算定する仕組みがとられています(資料p.58)。
令和6年度改定で労働時間や生産活動の得点配分を高めた結果、生産活動の収支が賃金総額を下回る事業所の割合は、令和6年3月末時点の37.4%から令和7年3月末時点の19.3%に下がりました。
一方で、現在の評価項目は生産性に関する項目の配分が大きく、福祉的な支援が十分に評価されていないのではないかという指摘もあります。
そこでA型の論点1では、生産活動収支の考え方は維持しつつ、支援の質に関する得点配分を高めてはどうかという方向性が示されました。 見直しのイメージでは、次のような変更が挙げられています。
| 評価指標 | 備考 | |
|---|---|---|
| A. 主たる項目 | ||
| ①労働時間 | 1日の平均労働時間により評価 | 現行より割合を下げる |
| ②生産活動 | 前年度及び前々年度における生産活動収支の状況により評価 | 現行より割合を下げる |
| ③障害程度 | 利用者の障害の程度により評価 | 新規 |
| B.従たる項目 | ||
| ④地域連携活動 | 地元企業と連携した高付加価値の商品開発等地域と協働した生産活動、研修講師等の地域貢献活動の取組実績により評価
※施設外就労についても、この項目の中で評価 |
内容を充実させる |
| ⑤個別支援 | 利用者の個別の状況等に応じ、利用者本位の支援を行った場合に評価 | |
| ⑥多様な働き方 | 利用者が多様な働き方を実現できる制度の整備状況により評価 | |
| ⑦支援力向上
(支援体制) |
職員のキャリアアップの機会を組織として提供している等、支援力向上に係る取組実績により評価 | |
| ⑧事業の透明性 | 第三者評価等を行った場合や児童系サービスで導入されている自己評価を行った場合などに評価 | 新規 |
| ⑨経営改善計画 | 経営改善計画の作成状況により評価 | 継続 |
- 労働時間と生産活動の項目は、現行より割合を下げる案です。
- 障害の程度と事業の透明性は、新たに設ける項目として示されました。
- 個別支援は内容を充実させる方向で、施設外就労は地域連携活動の項目で評価することが検討されています。
- 多様な働き方や支援力向上、経営改善計画の項目も、引き続き評価のイメージに含まれています。
令和8年度の就労継続支援A型の見直しについては、就労継続支援A型の令和8年度報酬改定の記事で紹介しています。
【A型・B型】就労選択支援との関わり
令和7年10月からは、B型を新たに利用する方は原則として就労選択支援を利用することになっています。横断的な論点9では、令和9年4月以降、新たにA型を利用する方も就労選択支援の対象とすることが予定どおり進められる方向です。
- A型の利用にあたり就労選択支援を利用した方についても、必要に応じて暫定支給決定を行うことを妨げない案です。
- 令和9年4月からA型を利用する予定の方、主に特別支援学校の現在の3年生については、進路活動に支障が出ないよう、令和8年度内の就労選択支援の利用を原則とせず、柔軟に運用する案が示されました。
就労継続支援の事業者には、利用者に就労選択支援に関する情報を定期的に提供することが基準省令で定められています。この情報提供が行われていることを確認できない場合に、減算措置を検討することも記されました。現に就労継続支援を利用している方が支給決定を更新する際に、将来的に就労選択支援のアセスメントを受けていることを要件とする方向性も示されています。
【A型・B型】就労移行支援体制加算の計上方法の見直し
横断的な論点1では、一般就労への送り出しを評価する就労移行支援体制加算について、仕組みを続けたうえで、計上方法を見直す案が示されました。
- 就労定着者の人数ではなく、定員などに対する就労定着者の割合に応じた評価にする案です。
- 同じ事業所から同じ就職先に就職した場合、計上できる人数に上限を設ける案で、例として5人までが挙げられています。
- 事業所の運営法人や関係法人への就職は、0.5人分として計上する案も出ました。
- 復職に向けた支援は、この加算とは別の形で評価することが検討されています。
この加算は、令和8年4月に年間の算定対象となる就職者数を定員数までとする見直しが行われたばかりです。
その際にも、令和9年度の改定に向けて加算のあり方を改めて議論するとされていました。
【A型・B型】生産活動シート・スコア表の公表と第三者評価
横断的な論点8では、利用者が自分に合った事業所を選べるよう、支援内容をわかりやすく見えるようにする観点から、情報公表の案が出ています。
- A型とB型で、生産活動シートとスコア表の公表を義務づける案です。A型のスコア表は、すでに公表が義務づけられています。
- A型とB型の第三者評価を努力義務とし、評価を受けて結果を公表した場合に何らかの評価を行う案も示されました。
生産活動シートは、令和7年11月に国が示したガイドラインのなかで、生産活動の収支や取引先の情報を確認するツールとして位置づけられているものです(指定就労継続支援事業所の新規指定及び運営状況の把握・指導のためのガイドライン)。
【A型・B型・就労移行支援】在宅での支援の対象者と報酬の見直し
在宅での支援は、就労継続支援と就労移行支援に共通する横断的な論点3です。
対象を、通所による支援を上回る支援効果が認められる方にしてはどうかという案が示されました。
対象としては、次のような方々が想定されています。
- 重度の障害や、離島・豪雪地帯といった地理的な理由で、通所が難しい方です。
- ひきこもりの状態にある方など、通所の支援につなげるために、まず在宅での支援が必要な方も含まれます。
- 在宅での一般就労を目指す方も対象とされていますが、この類型は原則として就労移行支援に限る案となりました。
事業所の要件や報酬については、次のような案が出ています。
- 在宅での支援は運営費が一定程度抑えられると考えられることから、基本報酬を一定程度引き下げ、定員に対する在宅支援の利用者の割合に上限を設ける案です。積極的な在宅支援を行っている場合は、従前どおりの単価とし、割合の上限も設けないことが検討されています。
- 在宅支援を提供する事業所は、あらかじめ指定権者にチェックリストを提出することも案に含まれました。
- 訓練や支援の状況を動画や静止画像などで保存し、求めに応じて提出できるようにすることは、現在の努力義務から必須の条件に変わる案です。
- 2に該当する方への在宅支援は、支給決定の上限を3か月とし、市町村が3か月ごとに更新の要否を判断する案も示されています。
自宅以外の場所での在宅支援は、ごく限られた場合に絞る方向です。事業所が場所を確保して運営規程に明記することが求められ、カフェなどは認められない案となっています。
これらは在宅支援をなくす案ではなく、通所が難しい方などに在宅で効果的な支援を届けるための要件を整理するものです。
【A型・B型・就労移行支援】施設外就労の実施ルールの見直し
施設外就労も、就労継続支援と就労移行支援に共通する横断的な論点4です。施設外就労先で適切な支援が行われているかを指定権者が確認しやすくするため、次のような案が示されました。
- 小規模な請負の場合を除き、すべての施設外就労先について、企業名や住所、生産活動の内容、利用人数の規模、実施予定期間などを運営規程に明記する案です。
- 施設外就労先の範囲は、県内や事業所から2時間以内など、指定権者が定める範囲に限る方向が示されています。
- 原則として月2日は、事業所内で訓練目標に対する達成度の評価などを行う案も挙がりました。
- 施設外就労先ごとに生産活動シートを作成し、指定権者への提出とホームページでの公表を行うことも検討されています。
施設外就労は、企業の実際の職場で働く意欲や技能を高める機会として、関係団体からも意義が示されました。 今回の案は、その支援が適切に行われていることや、取引が適正であることを確かめる仕組みを整えるものです。
就労移行支援の検討案
就労移行支援については独立した章はありませんが、横断的な論点2を中心に、一般就労への移行から定着までを切れ目なく支える方向で次の案が示されました。
一般就労後6か月間の支援を回数や内容に応じて評価する案
現在は、就労移行支援事業所などから一般就労した後の6か月間は、送り出した事業所が定着支援を行うことになっています。ただ、事業所によって支援にばらつきがあり、つながりが切れてしまう場合があるという指摘がありました。
そこで、一般就労後の一定期間、6か月を想定して、送り出した事業所が支援の回数や内容に応じて報酬を算定できる仕組みが検討されています。
短期間で離職した場合も同じ事業所が支援を続けられる案
本人が短期間で離職し、別の就職先を探そうとする場合に、同じ事業所が一貫して支援できるようにする案も示されました。
この場合は6か月の上限なく、同じ就労移行支援事業所が支援を続けられるようにする方向です。
ただし、支援全体を通して就労移行支援の標準利用期間である2年間、必要に応じて最大1年間の更新ができる期間の範囲内とし、一般就職後の支援は6か月に限るとされています。
就労定着率の高い事業所を評価する基本報酬区分の追加
短期間で一般就労に送り出す事業所を評価するため、利用定員に対する就労定着者の割合区分について、現行の最上位である5割以上よりさらに上の基本報酬区分を設ける案が出ています。就労定着者数の計上には、就労移行支援体制加算の見直しと同様の要件を設けることも検討されました。
標準利用期間を超えて利用する場合と就労選択支援
横断的な論点9では、令和9年4月以降、就労移行支援を標準利用期間を超えて利用する場合も、就労選択支援によって課題が把握されている方を対象とする予定です。
- 利用開始から1年6か月を経過したころを目安に、事業所が利用更新の必要性を検討し、必要と認められた場合に就労選択支援のアセスメントを行う案です。
- 2年目の利用者のうち、職場体験実習などの就職活動を積極的に行っていてアセスメントの実施が難しい一定のケースでは、多機関連携によるケース会議の記録などで支給決定を更新できるようにする案も示されました。
このほか、前章で紹介した在宅支援と施設外就労の見直しも、就労移行支援が対象に含まれています。在宅での一般就労を目指す方への在宅支援は、原則として就労移行支援に限る案となっている点も押さえておきましょう。
就労移行支援の現在の報酬の仕組みは、就労移行支援の報酬算定構造の記事で解説しています。
就労定着支援の検討案
支援の濃度に応じた段階的な報酬とする案
就労定着支援は現在、月1回以上の支援を月額の報酬で評価しています。資料では、企業の上司や同僚などによる職場での支え、いわゆるナチュラルサポートを促す観点から、福祉サービスによる定着支援の度合いを少しずつ下げていくことが期待されていると説明されました。また、一般就労後2年目以降は利用者に費用の支払いが生じることも多いことから、支援の濃度に応じた段階的な報酬設定とする案が、横断的な論点2のなかで示されています。
再就職した方を定着者として数えられる期間を3か月以内に広げる案
基本報酬のもとになる就労定着率では、支援の途中で離職しても、1か月以内に再就職すれば引き続き就労定着者として数えることができます。この期間は短いという指摘があることから、就労定着支援の論点1として、1か月以内を3か月以内に緩和する案が出ました。
就労定着実績体制加算で事業所の倒産などを除外できるようにする案
同じ論点1では、3年間を超えて働き続けている方の割合が高い事業所を評価する就労定着実績体制加算についても、見直し案があります。基本報酬の就労定着者数では事業所の倒産などの場合を除外できるのに対し、この加算には除外の規定がありません。そこで、加算でも事業所の倒産などの場合を除外できる取り扱いとする案が示されています。
就労選択支援の検討案
地域との連携を仕組みとして定める案
就労選択支援では、公平性や中立性を確保するため、協議会などへの説明や多機関連携のケース会議の開催が技術的助言として示されてきました。就労選択支援の論点1では、その実効性を高めるため、次の案が挙がっています。
- 指定基準に公平性や中立性に関する内容を加えたうえで、事業を始めようとする方が原則として圏域単位の協議会に運営方針などを説明し、評価を受けた内容を指定申請時に提出する仕組みです。
- 協議会などに原則として年1回以上、事業の運営状況を報告することを義務とする案で、令和10年度からの実施が想定されています。
- アセスメントを終えた利用者数や、各サービスにつながった利用者数、同一法人への移行率を情報公表制度で公表する案も示されました。
- 市町村長が認めた方をコーディネーターとして就労選択支援事業所に配置する仕組みを目指す方向も記されています。
本人の選択を狭める行為の禁止と特定事業所集中減算の見直し
論点2は、誘導行為などへの対策です。就労選択支援は本人のより良い選択を支えるサービスであり、特定の事業所へ誘導することを含め、本人の選択をゆがめることは厳格に防ぐ必要があるとされています。
- 運営基準などで、本人の選択肢を不当に狭める行為を禁止する案です。例として、自法人の事業所の利用を実質的に指定することや、見学先を特定の事業所だけに限ることなどが挙げられました。
- ほかの事業所の情報を提供する際には、所在地や空き状況、支援内容、一般就労への移行実績、工賃や賃金、利用時間などを伝えることを義務づける案も出ています。
- サービス提供記録やアセスメント結果に、本人が最終的に示した希望を記載し、希望と実際の利用先が異なる場合はその理由を記載することを必須とする方向です。
特定事業所集中減算は、つながった先が同一法人の事業所に80%を超えて集中している場合に適用されています。これについて、適用する水準を例えば3割に引き下げ、関連法人まで含めて算定し、減算割合も見直す案が示されました。一方で、アセスメント終了から3年が過ぎた場合などは、その後の移行先の把握を不要とする案もあります。
離島などでの支援を特別地域加算の対象とする案
就労選択支援の事業所は令和8年6月末時点で約1,000か所が指定されていますが、都道府県によって設置状況に差があり、地方部では整備が十分に進んでいない状況です。そこで論点3として、就労選択支援も特別地域加算の対象としてはどうかという案が出ています。
就労系サービス全体に関わる指定・運営ルールの見直し
令和7年11月に示されたガイドラインでは、新規指定時に自治体が確認する事項などが整理されました。
ただし、指定権者が強制力をもって働きかけることが難しいという意見があったことから、横断的な論点6として、その一部を施行規則や指定基準などに位置づける案が示されています。
- 他の事業所の指定申請書類や事業計画書などの流用は、原則として認めない方向です。
- 指定を希望する事業者は、市区町村や協議会などに事業開始について説明し、開所予定地でのニーズを確認する案が示されました。
- 生産活動について、工賃や賃金を支払える収入が見込まれるかや、取引先の情報などがわかる資料を提出する案も盛り込まれています。
- 生産活動シートは、運営指導や指定更新、毎年度初めの届出の際に指定権者へ提出することが想定されています。
すでに運営している事業所については、指定の更新時に指定権者が確認すべき項目を改めて示す方向です。
令和9年度障害福祉サービス等報酬改定の今後のスケジュールと検討の流れ
今後のスケジュール(予定)
令和8年6月5日の社会保障審議会障害者部会で報告された資料では、次のような流れが示されています(令和9年度障害福祉サービス等報酬改定について(報告))。
| 時期 | 予定されている内容 |
|---|---|
| 令和8年9月〜10月 | 各サービスの報酬等の在り方について検討 |
| 令和8年11月 | サービス横断的な報酬等の在り方について検討 |
| 令和8年12月 | 報酬・基準に関する基本的な考え方の整理・取りまとめ |
| 令和9年2月 | 障害福祉サービス等報酬改定案のとりまとめ |
改定後の報酬は令和9年度から適用される予定です。具体的な施行日は、今後示される告示などで確認する必要があります。
報酬改定検討チームでのこれまでの議論
| 開催 | 主な内容 |
|---|---|
| 第55回(令和8年4月28日) | 令和9年度報酬改定に向けた検討の進め方(資料) |
| 令和8年6月〜8月 | 関係団体ヒアリング |
| 第62回(令和8年8月27日) | 令和9年度報酬改定に向けた主な論点(案)(資料) |
| 第63回(令和8年9月24日) | 訪問系サービス(開催案内) |
| 第64回(令和8年9月28日) | 就労系サービス(資料) |
令和8年度の臨時応急的な見直しとの関係
障害福祉サービス等の報酬改定は、原則として3年に1度行われます。前回の改定は令和6年度でした。
令和8年度には、処遇改善加算の拡充や、就労移行支援体制加算、B型の基本報酬区分の基準の見直しなどを内容とする臨時応急的な見直しが行われています(厚生労働省 令和8年度障害福祉サービス等報酬改定について)。 令和9年度の改定は、こうした見直しをふまえて行われる3年に1度の改定です。 見直し全体の内容は、令和8年度障害福祉サービス等報酬改定(臨時応急的な見直し)の解説記事でまとめています。
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まとめ
第64回障害福祉報酬改定検討チームでは、就労系サービスの報酬と基準について、横断的な9つの論点とサービス種別ごとの論点が示されました。
就労継続支援では、B型へのスコア方式の導入とA型のスコア方式の見直し、会計区分や情報公表の案が出ています。就労移行支援と就労定着支援では一般就労から定着まで切れ目なく支える仕組みが、就労選択支援では公平性や中立性を確保する仕組みが検討されました。
いずれも検討段階の案であり、12月の基本的な考え方の整理や、令和9年2月の改定案のとりまとめに向けて具体化していく見込みです。障害のある方が自分に合った働き方を選び、一人ひとりに合った支援を受けられるようにするという見直しの方向性をふまえて、今後の動きを確認していきましょう。
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