就労継続支援B型では、令和6年(2024年)度の障害福祉サービス等報酬改定によって、基本報酬の考え方から加算・減算のルールに至るまで、幅広い項目の見直しが行われました。
障害福祉サービス全体の予算規模や利用者数が年々拡大する中、令和6年度は経営実態や支援の質に応じた、メリハリを重視した改定となりました。就労継続支援B型についても、工賃向上の取り組みや人員配置のあり方を中心に、多くの見直しが行われています。さらに令和8年度には障害福祉サービス等報酬改定(臨時応急的な見直し)も実施されており、実務に影響する変更が続いている状況です。
この記事では、就労継続支援B型における令和6年度の変更点を基本報酬から各種加算・減算まで項目別に取り上げます。あわせて、直近で施行された令和8年度の見直し内容にも触れていますので、2つの改定年度をまたいだ全体像の把握にお役立てください。
カンタン要約:就労継続支援B型の令和6年度報酬改定とは?
- 令和6年度の改定では、平均工賃月額に応じた基本報酬のメリハリが強化され、人員配置「6:1」の区分が新設されました。
- 短時間利用減算や目標工賃達成加算、就労選択支援の創設など、工賃向上と利用実態の適正化に関わる見直しが行われています。
- BCP未策定減算や虐待防止措置、情報公表未報告減算などのコンプライアンス関連の減算も新設され、令和8年度にはさらなる見直しが実施されています。
就労継続支援B型の令和6年(2024年)度の報酬改定におけるポイント
就労継続支援B型に関わる令和6年度の変更点は多岐にわたりますが、大きく整理すると次の4つの方向性に集約されます。
平均工賃月額に応じた報酬体系のメリハリ強化
平均工賃月額が高い事業所ほど基本報酬が高く評価される一方、平均工賃月額が低い区分の単価は引き下げられました。あわせて、平均工賃月額の算定方法自体も見直され、障害特性により利用日数が少ない利用者を受け入れやすい仕組みへと整理されています。
人員配置「6:1」の新設
従来の7.5:1、10:1という人員配置基準に加え、より手厚い支援を評価する「6:1」の報酬体系が新設されました。多様な支援ニーズを持つ利用者を受け入れる事業所を評価する仕組みです。
出典:厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定の概要」
工賃向上に向けた取り組みの評価拡充
目標工賃達成指導員配置加算の要件が見直されるとともに、工賃向上計画に基づいて実際に工賃を向上させた事業所を評価する「目標工賃達成加算」が新設されました。
目標工賃達成指導員配置加算・目標工賃達成加算について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
適正な支援時間・関係機関連携の推進
短時間利用に対する減算が新設されたほか、地域の関係機関との連携や、緊急時の受け入れ体制を評価する加算が新設されるなど、支援の実態に応じた評価の適正化が図られています。
それぞれの詳細は、厚生労働省「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定における主な改定内容」にもまとめられています。
また、令和8年度にも臨時応急的な報酬改定がすでに実施されており、詳細は記事後半で整理します。
基本報酬の見直し
数ある変更点の中でも、事業所の収支に直結する形で影響が大きいのが基本報酬の見直しです。令和6年度の改定では、次のような内容が反映されています。
「平均工賃月額」に応じた報酬体系(サービス費Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)の考え方
平均工賃月額に応じた報酬体系では、人員配置基準(6:1・7.5:1・10:1)と利用定員規模、そして前年度の平均工賃月額の3つの要素によって基本報酬の単位数が決まります。平均工賃月額が高い事業所ほど単価が高くなり、低い事業所ほど単価が引き下げられる仕組みとなっています。
サービス費Ⅰ〜Ⅲの単位数(人員配置6:1・7.5:1・10:1別)
単位数は以下のとおりです(単位はすべて単位/日)。
※以下は利用定員20人以下の場合の単位数です。定員規模が大きくなるほど単位数は低くなる仕組みとなっており、事業所の定員が21人以上の場合は別途単位数が定められています。
| 平均工賃月額 | サービス費(Ⅰ) 6:1以上 | サービス費(Ⅱ) 7.5:1以上 | サービス費(Ⅲ) 10:1以上 |
|---|---|---|---|
| 4.5万円以上 | 837 | 748 | 682 |
| 3.5万円以上4.5万円未満 | 805 | 716 | 653 |
| 3万円以上3.5万円未満 | 758 | 669 | 611 |
| 2.5万円以上3万円未満 | 738 | 649 | 594 |
| 2万円以上2.5万円未満 | 726 | 637 | 572 |
| 1.5万円以上2万円未満 | 703 | 614 | 557 |
| 1万円以上1.5万円未満 | 673 | 584 | 532 |
| 1万円未満 | 590 | 537 | 490 |
参照:厚生労働省「障害福祉サービス費等の報酬算定構造」
「利用者の就労や生産活動等への参加等」で評価する報酬体系(サービス費Ⅳ・Ⅴ・Ⅵ)の考え方
平均工賃月額の高さではなく、利用者の就労や生産活動等への参加そのものを評価する報酬体系です。人員配置基準(6:1・7.5:1・10:1)と利用定員規模の2つの要素によって単位数が決まります。
サービス費Ⅳ〜Ⅵの単位数
※以下は利用定員20人以下の場合の単位数です(単位/日)。サービス費Ⅰ〜Ⅲと同様、定員規模が大きくなるほど単位数は低くなります。
| サービス費(IV) 6:1以上 | サービス費(V) 7.5:1以上 | サービス費(VI) 10:1以上 |
|---|---|---|
| 584 | 530 | 484 |
工賃向上に向けた取り組みの評価【見直し・新設】
目標工賃達成指導員配置加算の要件・単位数見直し
人員配置6:1の報酬体系創設に伴い、目標工賃達成指導員配置加算の要件が見直されました。
見直し後は、目標工賃達成指導員を常勤換算方法で1人以上配置し、職業指導員及び生活支援員の総数が常勤換算方法で6:1以上、かつ目標工賃達成指導員を含めた総数が常勤換算方法で5:1以上であることが要件となります。単位数は以下のとおりです。
| 利用定員 | 単位数 |
|---|---|
| 20人以下 | 45単位/日 |
| 21人以上40人以下 | 40単位/日 |
| 41人以上60人以下 | 38単位/日 |
| 61人以上80人以下 | 37単位/日 |
| 81人以上 | 36単位/日 |
目標工賃達成加算【新設】
目標工賃達成指導員配置加算の対象となる事業所が、各都道府県において作成される工賃向上計画に基づき、自らも工賃向上計画を作成するとともに、当該計画に掲げた工賃目標を達成した場合に、1日あたり10単位が新たに加算される仕組みです。この加算を算定するにあたっては、目標工賃達成指導員配置加算を算定していることが前提条件となります。
目標工賃達成加算について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
利用実態を踏まえた基本報酬算定の適正化【新設・見直し】
短時間利用減算【新設】
「利用者の就労や生産活動等への参加等」の報酬体系(サービス費Ⅳ・Ⅴ・Ⅵ)を算定している事業所を対象に、算定利用時間が4時間未満の利用者が全体の5割以上を占める場合、所定単位数の70/100を算定する減算が新設されました。
ただし、個別支援計画において一般就労等に向けた利用時間延長のための支援が位置づけられ、実際に支援を実施した場合や、短時間利用となるやむを得ない理由がある場合は、利用者数の割合の算定から除外されます。
短時間利用減算について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
平均工賃月額の算定方法の見直し
障害特性等により利用日数が少ない利用者を多く受け入れる事業所があることを踏まえ、基本報酬を算定する際の平均工賃月額の算定方法が見直されました。
見直し後の算定式は、「年間工賃支払総額 ÷(年間延べ利用者数 ÷ 年間開所日数)÷ 12月」というものです。従来は工賃支払対象者から特定の利用者を除外する規定が設けられていましたが、新しい算定式の導入にあわせて、これらの除外要件は廃止されています。
施設外での支援に関する事務負担軽減【見直し】
施設外就労の実績報告書の提出義務廃止
地方公共団体の事務負担軽減の観点から、施設外就労に関する実績について、事業所から市区町村への毎月の提出が不要となりました。ただし、施設外就労の実績記録書類そのものの作成・保管義務は引き続き求められるため、この点にはご注意ください。
施設外支援の個別支援計画見直し頻度の緩和
施設外支援についても、個別支援計画の内容を見直す頻度が「1週間ごと」から「1ヶ月ごと」に緩和されました。施設外支援の内容が事前に個別支援計画に位置づけられ、当該支援によって就労能力や工賃の向上、一般就労への移行が認められる場合に報酬を算定できる、という基本的な考え方に変更はありません。
施設外就労については、こちらの記事を併せてご確認ください。
就労選択支援の創設とB型への影響【新設】
就労選択支援とはどのような制度か
就労選択支援は、利用者本人の希望や就労能力、適性等に合った選択を支援するため、短期間の生産活動等を通じてアセスメントを行う新しい障害福祉サービスとして創設されました。
就労選択支援について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
B型利用前の原則利用義務化(令和7年10月以降)とスケジュール
令和7年10月以降、就労継続支援B型の利用申請前には、原則として就労選択支援を利用することとされました。新規にB型の利用を希望する方の受け入れフローに関わる変更のため、B型事業所の経営者・管理者としては、相談支援事業所等との連携体制もあわせて把握しておく必要があります。
地域生活支援拠点等における緊急時対応の強化【新設】
緊急時受入加算
地域生活支援拠点等に位置づけられ、かつ、関係機関との連携調整に従事する者を配置する通所系サービス事業所において、障害の特性に起因して生じた緊急事態等の際に夜間の支援を行った場合、1日につき100単位が加算されます。
集中的支援加算
状態が悪化した強度行動障害を有する利用者に対し、高度な専門性を持つ広域的支援人材が事業所等を集中的に訪問等をし、適切なアセスメントと有効な支援方法の整理をともに行い、環境調整を進めた場合の評価です。
広域的支援人材が訪問等をした場合は1回につき1,000単位(月4回を限度)、3月以内の期間に限り加算されます。
特定の障害特性に応じた支援体制加算【新設・拡充】
視覚・聴覚言語障害者支援体制加算の拡充
意思疎通に困難を抱える視覚障害、聴覚障害、言語機能障害のある利用者に対しては、専門性を持つ職員による手厚い支援体制が求められます。こうした体制を整えている事業所を評価するのが視覚・聴覚言語障害者支援体制加算です。見直し後は以下の2区分に整理されました。
| 区分 | 単位数 | 対象利用者の割合 | 専門性を有する職員の配置 |
|---|---|---|---|
| (Ⅰ) | 51単位/日 | 利用者数の50%以上 | 利用者数の40分の1以上 |
| (Ⅱ) | 41単位/日 | 利用者数の30%以上 | 利用者数の50分の1以上 |
見直し前は(Ⅱ)に相当する要件のみでしたが、より手厚い体制を評価する(Ⅰ)が新たに設けられ、2区分に拡充された形です。
視覚・聴覚言語障害者支援体制加算について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
高次脳機能障害者支援体制加算の創設
交通事故や脳血管疾患などによる高次脳機能障害は、外見からは分かりにくい一方で専門的な理解と対応が必要とされる障害特性です。こうした利用者を一定数受け入れ、専門知識を持つ職員を配置する事業所を評価するため、高次脳機能障害者支援体制加算が新たに設けられました。
要件としては、前年度において高次脳機能障害を有する利用者が全体の利用者数の30%以上を占めていること、高次脳機能障害支援者養成研修を修了した従業者を前年度の利用者数に対して50分の1以上配置していること、そしてその体制を公表していることの3点です。単位数は1日につき41単位です。
福祉・介護職員等処遇改善加算【見直し】
従来の3加算から新加算への一本化
福祉・介護職員の確保に向けて、従来の福祉・介護職員処遇改善加算、福祉・介護職員等特定処遇改善加算、福祉・介護職員等ベースアップ等支援加算の3種類が、令和6年6月から4段階の「福祉・介護職員等処遇改善加算」に一本化されました。あわせて、新たに追加措置された処遇改善分を活用し、加算率が引き上げられています。
新加算の区分と要件
新加算(Ⅰ)〜(Ⅳ)は、上位の区分になるほど加算率が高くなる一方、満たすべき要件も段階的に厳しくなる仕組みです。加算・賃金改善額の職種間配分ルールが統一され、福祉・介護職員への配分を基本としつつ、特に経験・技能のある職員に重点的に配分することとされています。
新加算のいずれの区分を取得する場合も、新加算Ⅳの加算額の2分の1以上を月額賃金の改善に充てることが要件となります。
福祉・介護職員等処遇改善加算の詳細な区分・要件については、こちらの記事をご覧ください。
横断的な事務・算定ルールの見直し【見直し】
個別支援計画の相談支援事業所への共有義務化
指定基準において、各サービスの個別支援計画を指定特定相談支援事業所にも交付しなければならないこととされました。利用者を中心とした関係機関同士の情報共有を推進する観点からの見直しです。
食事提供体制加算の経過措置延長
令和6年3月31日までの経過措置とされていた食事提供体制加算について、令和9年3月31日まで経過措置が延長されました。あわせて、食事提供時における栄養面での配慮を評価する観点から、管理栄養士又は栄養士の献立への関与や確認、利用者ごとの摂食量の記録、体重やBMIのおおむね6ヶ月に1回の記録という要件が加わっています。
送迎加算の対象拡充
施設入所者が希望する日中活動の提供を促進する観点から、障害者支援施設と隣接していない就労継続支援B型等の事業所への送迎については、施設入所者についても送迎加算を算定できるようになりました。
業務継続計画未策定減算【新設】
減算率(B型は1%)と算定要件
感染症や非常災害が発生した場合であっても、必要な障害福祉サービス等を継続的に提供できる体制を構築するため、業務継続計画(BCP)の策定とこれに従った必要な措置を講じることが求められます。
就労継続支援B型を含む訪問・通所系サービスでは、これらの基準を満たしていない場合、所定単位数の1%が減算されます。
経過措置の適用期間
令和7年3月31日までの間、感染症の予防及びまん延防止のための指針の整備、及び非常災害に関する具体的計画の策定を行っている場合には、減算は適用されませんでした。
身体拘束の適正化【見直し】
身体拘束等の適正化の徹底を図る観点から、身体拘束廃止未実施減算の減算額が引き上げられました。従来は基準を満たしていない場合に1日につき5単位を減算する仕組みでしたが、見直し後は、居宅介護や生活介護、就労継続支援B型等の訪問・通所系サービスでは所定単位数の1%、障害者支援施設が行う各サービスや共同生活援助等の施設・居住系サービスでは所定単位数の10%を減算する仕組みに変更されています。
就労継続支援B型が障害者支援施設によって運営されている場合は10%区分が適用される点にご注意ください。
身体拘束未実施減算について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
虐待防止措置【新設】
令和4年度から義務化された障害者虐待防止措置を未実施の事業所に対して、基本報酬を減算する仕組みが新設されました。
虐待防止委員会の定期的な開催と職員への周知徹底、虐待の防止のための研修の定期的な実施、これらの措置を適切に実施するための担当者の配置という3つの基準のいずれかを満たしていない場合、所定単位数の1%が減算されます。
情報公表未報告減算【新設】
障害福祉サービス等情報公表システムを通じた情報公表は、利用者がサービスを選ぶ際の判断材料となるほか、事業所の財務状況の透明性を高める役割も担っています。この報告が未実施となっている事業所に対する情報公表未報告減算が新設されました。
就労継続支援B型を含む訪問・通所系サービスでは所定単位数の5%が減算されます。あわせて、都道府県知事等は指定の更新に係る申請があった際に、情報公表に係る報告がされていることを確認することとされています。
令和6年度からの変化の整理|令和8年度の報酬改定(臨時的な見直し)との違い
令和6年度改定後の状況を踏まえ、令和8年度には障害福祉サービス等報酬改定(臨時応急的な見直し)がすでに実施されています。就労継続支援B型に関わる主な変更点は、令和8年4月に施行された就労移行支援体制加算の見直しと、令和8年6月に施行された基本報酬区分の基準見直し、新規事業所への臨時的な報酬単価の特例、福祉・介護職員等処遇改善加算のさらなる拡充です。
令和6年度の改定で平均工賃月額の算定方法が変わったことにより平均工賃月額の水準が上昇したことを受け、令和8年度には基本報酬区分の下限が引き上げられるなど、令和6年度の見直しを補正する内容が中心となっています。
より詳しい内容は、「令和8年度障害福祉サービス等報酬改定(臨時応急的な見直し)とは?変更点や概要を解説」をご覧ください。
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令和6年度の報酬改定により、就労継続支援B型では「6:1の人員配置区分」「短時間利用減算」「平均工賃月額の新しい算定方法」「目標工賃達成加算」など、日々の記録や集計方法に直結する変更が同時に発生しました。特に平均工賃月額は、延べ利用者数や開所日数をもとに算定する仕組みへと変わったため、これまで以上に正確な利用実績の管理が求められます。
エクセル等での手作業による集計は、利用時間や工賃実績の入力ミスから「平均工賃月額の算定誤りによる報酬区分のズレ」や「加算の請求漏れ」につながるリスクもあるため、記録・請求ソフトの活用がおすすめです。
『かべなしクラウド』は、パソコンだけでなくタブレットやスマートフォンから請求データの元となる日々の支援記録を手軽に登録し、利用者ごとに情報を一元管理することができます。
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最後に
報酬改定に関する具体的な解釈や申請等については、その都度、最新情報をご確認いただき、自治体等へ申請・お問い合わせいただきますようお願い致します。
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